吉野川河口部の東環状大橋建設計画見直し・凍結を要請

 日本湿地ネットワークは2003年12月6日、徳島県知事に宛て、吉野川河口部の東環状大橋建設計画の見直しと、徳島市民・県民の充分な合意形成があるまでの工事の凍結を緊急に要請しました。併せて、国土交通大臣、環境大臣にも指導、働きかけを要請しました。


2003年12月6日

徳島県知事 飯泉 嘉門 様

日本湿地ネットワーク
代表  辻  淳夫

私たち日本湿地ネットワークは1991年5月に発足した全国の草の根湿地保護団体のネットワークです。(団体会員 66、個人会員 158)私たちは、本日起工式が催される吉野川河口部の東環状大橋建設計画について、以下の理由からその計画見なおしを求め、徳島市民・県民の充分な合意形成があるまで工事の凍結をされますよう、緊急に要望いたします。

理由:

  1. 四国太郎の名を持つ吉野川の河口部は、ゆたかな自然環境が残されており、その雄大な景観において世界に誇る自然遺産であり、この景観を破壊することは重大な損失である

  2. 当地域は1996年のラムサール条約ブリスベン会議で発足した、「東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類渡来地ネットワーク」に最初に参加した地であり、渡り鳥とそれを支える干潟生態系への影響が懸念される

  3. これら重大な損失を避けるための方策が十分検討されたのか?さらには徳島市民・県民の意志が、充分な情報公開と情報共有の上で問われたのか?いずれもまだ充分にされていないとしか判断できない。

以上

付言すれば、20世紀に私たち人類が犯してきたことの過ちのひとつは、自らの利便性を追及するあまり、失ってはならない自らの生存基盤や、大いなる価値を破壊してきたことでありましょう。

観光地として有名なスイスのレマン湖では、交通渋滞解消のために企画された道路計画について、住民投票にかけた結果、住民は景観を破壊することより渋滞を我慢する方を選んだそうですが、ここに過去の過ちに学んだ人々の叡智があると思います。

吉野川といえば、第十堰を壊して可動堰にかえる計画について、それは住民自身が決めることとして、沈着冷静に住民投票でその意志を示したことで世界に知られ、私たちの誇りです。