東京湾・盤洲干潟が危ない

御簾納照雄(小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会)

干潟の概要

 現在、東京湾に存在する干潟は、三番瀬、谷津、盤洲、富津などが挙げられますが、その中でも盤洲干潟は、1400haの広大な面積を持つ日本最大級の砂質干潟です。
 干潮時には、目の前に広がる広大な砂浜(前浜)と自然海岸の後背地には約43haにおよぶ塩性湿地帯(後浜)があり、ここにはヨシが生い茂り、大昔から引き継がれた自然干潟を形成し、原風景をとどめています。
 1988年、千葉県環境部の調査報告書によりますと、盤洲干潟、小櫃川河口域で確認された生物は、植物約350種、野鳥128種、魚類60種、底生動物約40種、特に今や地球上でこのアシ原のある局地的な場所にしか棲息しない昆虫も発見され、学術的にも貴重な財産といえます。

冬の盤洲干潟。43haの広大なアシ原。 向こう側はアシ原。上げ潮時、カニ穴から泡がたくさん出て海水中に酸素が供給される。

アクアライン開通後の周辺開発

 しかし、東京湾アクアライン開通後、この地域に開発の目が向けられ、千葉県企業庁が埋め立て、地元金田漁協振興のために払い下げられた土地はホテル業者が1999年4月買収し、5階建温泉施設および11階建てホテル(高さ45m)の建設計画が発表されました。私たちは干潟環境に重大な影響を与えるとして建設見直しを求めて数回の話し合いをもちましたが、県が建設を許可、話し合いは一方的に拒否され、工事は進行し、2000年、温泉施設、翌2001年、ホテルも営業を開始し、現在に至っています。
 この時点で、干潟について法的保護が皆無の状況であることから自然保護団体が大きな輪をつくらなければ干潟は守れないことに気づき、県内の14団体が結集して当連絡会が発足しました。

1月始めに発芽して3カ月で5cm程に成長したシオクグ。 手前はシオクグ。先端が枯れ元気がない。無くなったものも多い。

排水の影響? ハママツナ壊滅状態

 温泉施設、ホテルの排水は合計日量1000トンに達します。その影響と思われることが、アサリ、バカガイ、海苔、魚、底生植物などに現れ始めています。
 アサリ、バカガイの収量は激減し、海苔も収量が減少しています。環境省が調査対象としているハママツナ群落は、既に群落ではなくなり、昨年段階でほぼ3カ所に数平方メートル単位で散見するまでになりました。特に昨年からの減少は著しく、本年1月からの追跡調査でも種は周辺に落ちて発芽はしてもそれから先が育たなくなっています。今年5月に入ってから3カ所のうち1カ所は1本もなくなってしまいました。全滅が近づいていると危惧します。同じことが底生植物のシオクグにも現れており、既に30パーセントは根腐れでなくなりました。現在、かろうじて生きているものも先端がほとんど枯れており元気がありません。弱いものから影響を受けていると考えられます。

40年間の干潟防人・桐谷新三氏。 桐谷新三氏を講師に迎えての盤洲干潟学校(干潟を守る日2004)。「しかけ」にうなぎが入っているかな?

追い討ちをかける開発

 さらに2000年末、干潟直近に子どもを対象とした広大な敷地(約8ha)を持つ遊戯施設の計画があり、既に千葉県は開発を許可してしまいました。着工には至っていませんが建築確認申請がいつ出されるか分からない状況にあります。なお事業主は三番瀬円卓会議の委員であった方です。
 本来であれば、盤洲干潟に隣接するこの計画地は、干潟を守るための緩衝地帯であるべき地域です。干潟への大きな影響として騒音(自動車、放送)、夜間照明、排水が予想されます。水はリサイクルして使用し、最後は敷地内の植物などに散水するとのことですが、いずれは干潟へ排出されます。
 残念なことに、この遊戯施設建設に当たって、一部の自然保護団体(?)が事業主側の手に乗って「法的に止めることができないのならば条件を出そう」ということで早い段階で条件を出してしまい、開発許可まで進行してしまいました。事業主側との最後の話し合いの席で事業主代理人は「自然保護団体が結束して反対していたら出来なかった」と述べています。反対を貫いていれば最悪の場合でも業者側が逆に条件を出してくるのです。
 まだ建築確認申請が出ていませんのでこれからもねばり強い反対運動が必要です。
 三番瀬を守る皆さんとも連帯しながら、東京湾に残された貴重な自然である浅瀬・干潟を、出来うる限り開発負荷なく残すために、行政や関連団体に要請していくことを主眼に粘り強く活動していきます。

(JAWAN通信 No.78 2004年7月1日発行から転載)