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未来へつなごう! 和白干潟

和白干潟をラムサール条約登録地に!

 山本 廣子 (和白干潟を守る会代表)


「和白干潟を守る会」の活動の目的は、和白干潟をみんなが守るようになることです。
 和白干潟を地域の宝、福岡の宝、日本の宝として、周りに住んでいる人も日本中の人も、守って当然だと思うようになることです。和白干潟がラムサール条約に登録されることもその一つで、その為に活動の目標に「和白干潟のラムサール条約登録」を掲げてきました。
 今年(2009年)1月には「朝日新聞社」と「森林文化協会」により、和白干潟が「にほんの里100選」に選ばれました。少しずつ、絶え間なく流れる水のように、和白干潟を保全する心が広がっていくように願っています。
和白干潟観察会
和白干潟の自然観察会

 和白干潟80ha(和白海域300ha)は博多湾東奥部にあり、東アジアの渡り鳥の渡りルートの交差点にあたる重要な場所で、渡り鳥の数と種類が多いことで知られています。
 日本海側では最大規模級の干潟で、春と秋はシギ・チドリ類の中継地、冬季はカモ類をはじめカモメ類やカイツブリ類など多数の水鳥の越冬地となっています。1980年以降237種の野鳥が観察されており、絶滅が心配さるクロツラヘラサギやズグロカモメ、ツクシガモなどの越冬地としても重要です。和白干潟には多様な底生動物が生息し、水鳥の栄養源にもなっています。
 博多湾はその中央部から開発が進み、自然の海岸線は20%以下となっていますが、和白干潟は自然の海岸線が残り、干潟・アシ原・クロマツ林が連なる干潟の原風景を小規模ながらも残している点で極めて貴重な場所です。ハママツナ、ハマニンニク、シバナ、ウラギクなどの貴重な塩生植物群落が見られます。ヒトモトススキ群落は九州地区でも有数の規模です。また福岡都心部に近く、潮干狩りをする人も多く訪れています。
 干潟はほとんどが砂質干潟であり、河口部の一部が砂泥質及び泥質です。干潟表面は比較的硬く、ふつうの靴でも低潮帯まで歩いていくことができるので、特別な装備は必要なく、底生動物の観察はきわめて容易です。 

環境を取り巻く課題

 和白海域周辺は宅地が広がり、近くにあった農地も失われつつあります。また1994年7月から干潟沖の浅海域を大規模に埋め立てる人工島建設工事(401ha)が進行中です。和白海域の潮流が妨げられて海水交換が悪くなり、海域が静穏化して底質が悪化し富栄養化を促進させ、9月から12月頃にアオサの異常発生を招いています。

 和白干潟沖人工島の埋め立ては約70%程進み、現在湿地が出来ている市5工区も2010年度中には埋め立て完了予定です。人工島の和白干潟側海域に人工島に隣接して人工干潟の構想があります。人工干潟は和白海域を埋め立てて、和白海域の潮の流れをさらに阻害することが考えられます。

 和白干潟(和白海域と陸域254ha)は2003年11月に県指定から国指定和白干潟鳥獣保護区になりました。このための基礎調査を環境省の委託によりWWFジャパンが行ない、和白干潟を守る会も協力しました。2004年に和白干潟は環境省のラムサール条約登録湿地の候補地に上がりましたが、地元の同意が得られていないという理由で国指定鳥獣保護区の特別保護地区にはなっていません。
 和白干潟北側の塩浜護岸工事は完了。将来和白海域北岸を通る都市計画道路の計画もあり、渡り鳥への影響が心配されます。

これからの活動の方向

 ラムサール条約登録湿地になるように、国、県、市など行政が保全対策を含めもっと積極的に取り組むことが急務です。ラムサール条約湿地になれば「国指定鳥獣保護区特別保護地区」の指定により、水面の埋め立てや干拓、樹木の伐採、工作物の設置などの開発が制限されます。また地域の人々の湿地保全の意識が高まり、保全への取り組みが活性化することが期待できます。
 福岡市の「博多湾環境保全計画」(2008年3月)では、博多湾全域の水質保全目標を定め、下水の高度処理を推進するとしています。博多湾東部海域の「エコパークゾーン」では、和白干潟ゾーンは「マリンスポーツの利用を禁止する区域、潮干狩りや水生生物の観察などを楽しむ区域」という棲み分けのルールを決め、このルールを周知徹底していくことになりました。和白海域への動力船の進入禁止の条例が望まれます。

 和白干潟では4〜5月には1日1000人以上の人が潮干狩りに訪れます。業者によるコメツキガニなどカニの捕獲も行われています。渡り鳥の多い4〜5月と潮干狩りの時期が重なり、シギ・チドリたちが干潟で採餌できない状況が続いています。潮干狩りの時期や範囲を制限したり、業者による捕獲を規制することが望まれます。
山本 きりえ「メダイチドリ」
きりえ・くすだ ひろこ メダイチドリ

 「和白干潟を守る会」は定例のクリーン作戦や水質・水鳥調査などの保全活動や、独自の環境教育プログラムで保育園や小・中・高・大学生・一般を対象に和白干潟の自然観察会を行っています。

 また、この4月に90号を迎えた会報「和白干潟通信」は年4回5000部を発行し、和白干潟近郊に配布しています。「和白干潟を守る会」の活動は今年で21年になりますが、引き続きこのような活動を通して地域住民、市民、子供たちへの働きかけに力を注いでいこうと思っています。

(JAWAN通信 No.93 2009年5月30日発行から転載)

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