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2010 年度総会&シンポジウム終わる

日本湿地ネットワーク運営委員 牛野くみ子


 2010 年度日本湿地ネットワーク総会とシンポジウム「生物多様性と日本の湿地」を、6 月12 日名古屋市野跡の稲永ビジターセンターで開催しました。
 総会は2009 年度の事業報告、決算報告、会計監査、2010 年度の事業計画案、会計予算案そして規約改正などが報告、審議され、満場一致で承認されました。前に干潟を眺めながらの景観は、素晴らしく、コアジサシも浅瀬に餌を求めダイビングしていました。

高山先生講演
基調講演「生物多様性条約COP10とは何か」

 シンポジウム最初は、生物多様性条約市民ネット共同代表の高山進さんから「生物多様性条約COP 10 とは何か」の基調講演です。
 生物多様性条約は1992 年、リオデジャネイロで行われた「地球サミット」で、「気候変動枠組み条約」と共に生まれました。双子の条約と言われる由縁。
 COPのPはパーティですから、国以外は正式のメンバーではないが、国連の会議に市民が大勢参加する伝統はこの会議から始まった。市民社会の連携組織として市民、企業等がボランティアという形で入っている。
 当時、発展途上国と先進国の間での合意は、きわめて困難であったが、この会議のキーワードである「持続可能な発展」(SustainableDevelopment)を多義的に解釈できるとして「経済発展の持続性」としてあいまいな余地を残したため合意が得られた。だから開発と保全を離して考えてはいけないと。
 また、生物多様性ということばを「生命多様性」という訳語で良いのか。生物以外の要素、人間以外の要素はどうなのかと言うことでアイヌの話をされました。人はかつて自然資源と直接向き合い保全しながら利用する智恵をもって、自然と共生する文化や暮らしを育んできた。川、風、火、土、生きもの、人間が互いに育てあうウレシパモシリ( アイヌ語で大地という意) ということばも生まれた。が、その価値は正当に認知されてこなかった。
 しかし今、その「文明の転換」が求められている。今まで、生物多様性の損失速度の目標を定め戦略計画が立てられてきたが、2010 年目標はゼロに終わった。今後はバラバラ、縦割りで行われてきた政策を統合していかなければならない。そういったことをCOP 10 では提言していきたいとまとめられました。
 次は、あん・まくどなるど( 国連大学高等研究所 いしかわ・かなざわオペレーティングユニット所長)さんです。公務でお出でになれずビデオメッセージが用意されていました。講演に来られず申し訳ないと謝っておられました。
 厚岸に行ったとき、潮が引くといろいろな生物が出てきて、そこに発見、驚きを見たこと。いのちのゆりかごである干潟、湿地の重要性を名古屋から全国各地に発信していきたいとのメッセージでした。ちょっと四国のマーガレット・鈴木さんに似たチャーミングな方でした。続いては釧路公立大学教授であり、私たちジャワンのアドバイザーである小林聡史さんの講演です。
 地球レベルで自然保護を進めているラムサール条約は、国際条約のうちでは一番古く、1971 年に誕生しました。来年2011 年には40 周年を迎え「国際森林年」ということもあり、「世界湿地の日」のテーマは「湿地と森林」となる予定。2012 年の世界湿地の日及びCOP 11 に向けてのテーマを「湿地、ツーリズムとリクリエーション」にしようと、先頃、常設委員会で話し合われたそうです。
 現在、世界では1889 カ所の湿地がラムサール登録されている。藤前干潟は日本では12 番目、世界では1200 番目と覚えやすい、また当時の、登録にまつわる面白いエピソードも交えお話しされました。
 ラムサール登録された湿地の1割がモントルーレコードに記載されている。危機的な湿地はもっと多い。2012 年は第1回地球サミットから20 年目。私たちは将来世代のための責任を果たしていると言えるようになるのかと。
 劇団シンデレラの唄と踊りが始まる直前、辻代表がいつものにこやかなお顔で現れました。辻さんも私たちも久しぶりの出会いに興奮してしまいました。とても嬉しかったです。
「湿地を讃える」ミュージカルは、心ない人間の行為が、物言わぬ生物( カニや鳥、水)たちに与える悪影響を唄と踊りにしたもので、とても素晴らしかったです。
 感動を貰った後は、「瀬戸内海」「ハチの干潟」「吉野川河口」「中池見」「小櫃川河口」「藤前干潟」「三番瀬」「遺伝子組み替えナタネ輸入の問題」「湧水湿地」など10 団体からの報告そして意見交換があり、ほぼ予定時間内に終了しました。
 その後の懇親会にも沢山の方が参加し、話に花が咲きました。なお、シンポジウムの参加者は71 名。この秋には生物多様性条約COP10があり、また名古屋で顔を合わせることになるでしょう。お祭り騒ぎに終わらせず、実りあるものにするため、私たちの運動の対策も練らねばなりません。力を合わせて進めていきましょう。
 最後になりましたが藤前干潟の皆さん、いろいろとお世話になり、有難うございました。

湿地を讃えるミュージカル(劇団シンデレラ)。
6 月12 日シンポジウム「生物多様性と日本の湿地」にて

(JAWAN通信 No.97 2010年7月10日発行から転載)

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