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諫早湾の明日を語ろう

大島弘三 (諫早湾しおまねきの会)

1.2013 年12 月までに開門する

 毎年4 月14 日は諫早湾にギロチンが落とされた記念日である。全国のJAWAN の仲間を始め、干潟と湿地をフィールドに行動する仲間が一斉に活動のレベルを上げ、新たな気持ちを確かめ合う時でもある。
 諫早湾でも、私達は、今年は特別の感慨を持ってその時を迎えた。いよいよ開門が現実のものとなる年である。
 2010 年12 月、福岡高裁が干拓事業による漁業被害を認め、排水門の開放を命じた。
 その内容は「3年間の猶予のあと、南北排水門の5年間の常時開放」である。
 当時の菅首相が最高裁への上告をしなかったので、判決が確定した。
 今年はその期限の3 年目。12 月までに海水が諫早湾の調整池に流れ込むことになる。

2.開門調査の問題点

 農水省の説明によると、現在の諫早湾調整池の水位は「平常時は、排水門操作によって調整池の水位をEL(-)1.0m に管理する。また、洪水時には、外潮位が高い場合、調整池に一時貯留し、外潮位が低い干潮時に外海へ排除する。」とあります。
 つまり基本的に標高マイナス1m のレベルで調整池の水位を管理する。雨が降って川からの雨水で水位が上がって来たら、干潮の時に排水し調整池は常にマイナス1m を維持している。
 今回の開門の際には、その水位をどのようにするのか。
 農水省はいくつかの案を提起した。
 ケース1は当初から終わりまで全開門。
 ケース2は、当初は「3-2」にあるマイナス1.2m の開門から始まり、最終的に全開門まで進める。そしてケース「3-1」は管理水位の上限をマイナス0.5m。「3-2」はマイナス1.0m とし、下限はいずれもマイナス1.2mとする。
 この中からケース「3-2」の開門方法でやると明らかにした。
 つまり、調整池の水位をマイナス1.0m 〜マイナス1.2m の間で管理する。
 農水省の開門方法は下記をご覧ください。
 http://www.maff.go.jp/kyusyu/seibibu/isahaya/pdf/ h_hyouka_1_houhou.pdf
 福岡の高等裁判所が指示したのは「排水門の開放」ではないのか。それを農水省は、干潮の時期に調整池の水位をマイナス1.2m までで止める。さらに満潮の時にはマイナス1.0m で止める。
 外界の干潮と満潮の海水位の差は6m にも達しているのに、わずか0.2m の開門でお茶を濁そうとしています。
 満潮の時に諫早湾の調整池奥部のまで海水が届きません。さらに干潮の時に調整池の水が完全には排水出来ません。

3.長崎県知事と農水省の談合

 農水省は「長崎県、地元の了解が取れないので、最も影響の少ないケース3-2 で開門する。」つまり、県知事に「地元の了解なしには開門させん。」と言わせておいて、開門効果が無い、わずか20 センチの開門でしのぎ、開門の結果は「特に顕著な効果はありませんでした。」という報告書を作り、5年後に再び海水の導入を止め、アオコの調整池を再現する。
 これが開門したくない農水省と県知事の、今回の開門調査の談合による筋書きです。

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4.市民主導の開門と干潟再生を求める

 今年の4 月13日、諫早市の高城会館での「干潟を守る日2013」諫早集会で私達は、「開門したらどうなるのか。」、「昔の諫早湾はどんな所だったのか。」などをテーマにグループディスカッションをしました。
 出された意見は、「本明川にウナギが戻って来る。」「アサリ、タイラギ、アゲマキが採れるようになる。」「海に後継者が戻って、漁師もニコニコ。」
 市民、漁民、子供達そして研究者の方々など、みんなでこれからの諫早湾を語り合えば自ずと何をやればいいのか、明日のためにどうしたらいいのか展望が開ける。そのための取り組みを、今始めよう。

(JAWAN通信 No.105号 2013年6月21日発行から転載)

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