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諫早開門を必ず実現

〜確定判決の実行を〜

弁護士 馬奈木昭雄

 諫早湾干拓地の開門問題をめぐり、国(農水官僚)は、開門したくない一心でごまかしの主張を続けている。
 国は、福岡高裁判決により開門を命じられ、しかも上告を断念して、自ら開門義務を受け入れ実行することを確定させたにもかかわらず、官僚は、その実行を手を変え品を変え拒み続けている。確定判決を国が実行しないなどということは、憲政史上初めてとのことで、とうてい許されない。
 官僚は、確定判決の実行を差止めた長崎地裁の仮処分決定によって、相反する二つの義務を負ったため、どちらか一方を選択することができない、と主張している。また、開門を実行するために、開門によって生じる営農者などの被害を阻止するための対策事業に着手しようとしたが、現地で実力阻止を受け、工事に着手できないため開門することが不可能になっている、とも主張する。しかし、これはいずれもごまかしの主張に過ぎない。
 まず何よりも、確定判決が国に開門を命じたのは、干拓工事に着手して以後、工事によって有明海に発生した漁場環境の異変と、それによる重大な漁業被害を防止回復し、有明海を再生させるためには、開門が必須の条件だと判断したからである。しかし、官僚や開門に反対する長崎県知事などは、この現在発生している重大な漁業被害を否定し、その被害防止を無視する。その上で開門したら生じるかも知れない被害だけを一方的に強調するのである。
 そこで問題の本質は、開門する義務と開門してはならない義務が衝突しているのではない。国はそのどちらの立場に立つのかの選択をすることは許されない。答えは明確であり一つしかない。二者択一の選択ではなく、漁業と農業のそのいずれをも満足することである。すなわち、まず漁業被害を防ぐためには、確定判決が命じるとおり、開門することである。一方、その開門によって生じる恐れがある被害については、被害発生を防止するために必要な対策工事をきちんと行うことである。
 開門を差止めた長崎地裁の仮処分決定は、対策工事が行われる可能性が低いと判断して、農業被害が起きる恐れを考慮している。それならば、国は開門する腹を決め、営農者が納得できる対策工事をすることが必要である。
 その対策工事を行うための手段としては、開門をめぐる訴訟が係争中の福岡高裁と長崎地裁で(訴訟の進め方を話し合う)進行協議か和解協議の場を設定して、国と営農者、漁業者の3者が工事内容を細かく決める。営農者が開門に反対するのは『(農業被害が生じて)国にだまされるに決まっている』という国への不信感があるからである。裁判所をアンパイア(審判)にして、農業者も納得のいく案を作成し、協議の結論に強制執行できる法的な担保をもたせればいい。営農者には、国の対策工事案のどこが悪いのか具体的に指摘してもらう。漁業者も一緒に良い方法を考え、国にせまる。
 開門反対を主張する人たちがその協議にも応じない、ということはまさに駄々をこねているだけで、不合理極まりない態度である。
 私たちは開門を求めて、現在国に強制執行の手段として間接強制金を、毎日45万円支払わせている。このような無駄な支出をあえて行い続ける国・官僚に対し、国民の怒りの声を集中していくたたかいが、今、求められている。

(JAWAN通信 No.109 2014年11月30日発行から転載)

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