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人工干潟造成の中止を要請

〜三番瀬保全団体〜


 三番瀬は「再生」という名の人工改変の危機にさらされている。千葉県が「三番瀬再生」や「干潟的環境形成」のうたい文句で三番瀬の浅瀬をつぶし、人工干潟をつくろうとしているからだ。

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県交渉で人工干潟造成中止を要請=10月3日

*「干潟的環境形成検討事業」

 県は今年度、「干潟的環境形成検討事業」を実施中である。市川市塩浜2丁目の護岸前において100m×50mの規模の人工干潟を机上で検討するとしている。その中間報告を9月18日の三番瀬専門家会議で提示した。人工干潟の比較としてA案、B案、C案を具体的に示した。砂の流出対策として、突堤、潜堤、矢板、堰堤などの構造物も設置するとしている。県は、そんな人工干潟を市川市塩浜2、3丁目地先の海域(猫実川河口域)で大規模につくることをめざしている。
 そこで、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県自然保護連合など9団体で構成する「三番瀬を守る連絡会」は10月3日に県と交渉し、人工干潟造成検討の中止を要請した。

*言い逃れに終始

 交渉には31人が参加した。県議会議員の勉強会も兼ねたため、4人の県議も同席してくれた。矢崎堅太郎議員(民主党)、丸山慎一議員(共産党)、岡田幸子議員(同)、ふじしろ政夫議員(市民ネット・社民・無所属)である。県側の出席者は入江信明三番瀬担当課長など3人である。
 はじめに、事前に提出した17項目の質問事項について三番瀬担当課長が回答した。回答は文書でも提示した。県の回答は“ああ言えばこう言う”式である。私たちは、三番瀬海域で人工干潟を造成することの問題点や理不尽さを、根拠をあげながら具体的に指摘した。全国の失敗例も示した。だが、課長はきちんと答えることができない。「人工干潟をつくると決めたわけではない」「人為的に干潟をつくることが有用なのかどうかを机上で検討する」「われわれは、人工干潟をつくれば三番瀬の環境がよくなるという考えでやっている」などと、言い逃れに終始である。人工干潟をつくれば三番瀬の環境がよくなるという具体的根拠はいっさい示せなかった。

*自然は人間の思いどおりにならない

 そういう県の姿勢に対して参加者から批判が相次いだ。17人が発言した。
 大規模な人工干潟を造成するさいは、鬼(き)泪(なだ)山(やま)国有林(富津市)の山砂を用いることも危惧される。そこで、「鬼泪山の国有林を守る市民の会」のメンバーも参加し、こう述べた。
 「三番瀬で人工干潟をつくっても、成功するかどうかわからない。むしろ、三番瀬の環境を悪化させる可能性が高い。そういうものになぜ、わざわざ富津や君津の山を崩し、国有林を削って、山砂を投入しようとするのか。よそから砂をもってきて、砂の供給元をメチャクチャにするばかりか、三番瀬もどうなるかわからないという。そんなことはやめていただきたい」
 元県職員の永田正則さんはこう述べた。
 「いちばん大事なのは、三番瀬の環境を悪化させた責任はだれが負うべきなのか、ということだ。それは千葉県だ。私も県の土木技術者として浦安から富津までの埋め立てにかかわった。残念ながら、環境破壊の仕事を手伝った。いまはそれを反省している。県は、その場しのぎでいろいろなことを小出しにする。それも、失敗が目に見えているようなことを、である。そんなことはもうやめるべきだ。自然は人間の思いどおりにはならない」

*人工干潟はやめてラムサール条約登録を

 交渉に同席したふじしろ政夫議員は、さっそく10月7日の県議会環境生活警察常任委員会でこの問題をとりあげてくれた。
 ふじしろ議員は、「人工干潟の成功例はない」 「人工干潟はいまある海(三番瀬)を埋めてつくるのではなく、すでに埋め立てたところを削ってつくればいい。そういう話が出ている中でわざわざ埋めることは将来に大きな禍根を残す」「千葉県のよさとして三番瀬をラムサール条約に登録し、いまある干潟を完全に守っていくことが必要」などと述べ、人工干潟造成にこだわる県の姿勢を追及した。

*三番瀬ミーティングでも批判相次ぐ

 10月25日、県主催の三番瀬ミーティングが浦安市内で開かれた。このミーティングは、三番瀬再生事業などについて、地元住民、漁業関係者、環境保護団体などから広く意見をだしてもらうことが目的である。ここでも人工干潟造成に対する批判が相次いだ。ラムサール条約への早期登録を求める意見もでた。
 一方、三番瀬を漁場とする3漁協(船橋、市川行徳、南行徳)の代表も発言した。3漁協の発言はほとんど同じであった。「ラムサール条約登録よりも漁場再生が先」「漁場を再生するために人工干潟を造成すべき」というものである。これは、県の意図を後押しするものである。漁協が唱える「漁場再生」の中身は人工干潟造成であることもはっきりした。
 三番瀬は、2001年9月に埋め立て計画が白紙撤回になった。だが千葉県は、埋め立て計画の主目的であった第二東京湾岸道路を三番瀬に通すことはあきらめていない。その前提として人工干潟造成を位置づけている。三番瀬保全団体は10年以上にわたり人工干潟造成を食い止めてきた。だが、県は本腰を入れたようだ。三番瀬は新たな正念場を迎えている。      

写真2
県主催の三番瀬ミーティングでも人工干潟造成批判が相次いだ=10月25日
(文責・編集部)
(JAWAN通信 No.109 2014年11月30日発行から転載)

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