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■自然と環境を守る交流会の講演(要旨)

自民・公明の瀬戸内法改訂案を大幅修正

環瀬戸内海会議 若槻武行さん

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若槻武行さん

 環瀬戸内海会議(環瀬戸)は、瀬戸内海沿岸府県の市民団体のネットワークである。2014年春、瀬戸内海環境特別措置法(瀬戸内法)の改正を求める署名10万筆を衆参両院議長に提出した。「埋め立て、産廃持ち込み、海砂採取」の3つの全面禁止を求めるものであった。
 一方、自民・公明両党は同年6月、「瀬戸内法改正案」(旧改訂案)を通常国会に提出した。その内容は、埋め立ての促進につながる「事業」を盛り込んだり、現行法にある「富栄養化」条項を削除したりするなどの改悪であった。
 この法案の背景には、一部学者のこんな発言がある。「瀬戸内海はきれいになり過ぎて栄養が減少した。貧栄養化したため、漁獲量が減り、ノリが色落ちした。だから、工場や生活排水の規制を緩め、畑と同じように肥料を海に撒(ま)くべきだ」と。この主張をマスコミが喜んでとりあげている。
 ところが実態は違う。瀬戸内海では今でも赤潮の発生件数が年間100件を超えている。赤潮の原因は富栄養化だ。干潟・浅場・藻場の埋め立てによって海水の浄化能力が大幅に低下したので富栄養化が進み、植物プランクトンが増え過ぎたのだ。赤潮の海の底にはプランクトンの死骸が大量に溜まる。それを分解する細菌は大量の酸素を消費する。その海域は、生物が棲みにくい貧酸素海域となる。これも漁獲量減少の大きな原因の一つだ。
 そこで、環瀬戸は自公両党の旧改訂案の大幅修正を求めて国会ロビー活動を進めた。結局、この旧案は2014年11月の衆議院解散で廃案となった。
 その後、2015年の通常国会で、自民・公明・民主・維新4党の「新改正案」が議員立法として通常国会の参議院に提出された。
 「新改正案」には環瀬戸の要求が一部反映された。富栄養化条項が復活し、「貧酸素水塊」の対策がとりあげられた。しかし、「埋め立て禁止」は盛り込まれないなどの問題点が残った。
 「新改正案」は2015年9月、衆議院本会議において全会一致で可決・成立した。
 衆参の環境委員会では、遊休埋め立て地の多さを環境省や国交省が掌握していないことが追及された。埋め立ての弊害に関し、われわれの署名運動の主旨が環瀬戸の名前と共に紹介された。辺野古の埋め立て土砂の採取・搬出で、瀬戸内海の環境破壊が進むことも指摘された。また、衆議院の環境委員会では、新たなめ埋め立ての抑制につながる付帯決議が行なわれた。これらが議事録に残った点は大きい。
 今回の法改訂で「埋め立て禁止」は実現しなかったが、私個人は3分の1は勝利したと思っている。今後は現場で埋め立て反対、とくに有害産廃の鉄鋼スラグによる埋め立ての阻止、湾・灘ごとの協議会への参加の活動を進めることになるだろう。

(JAWAN通信 No.114 2016年2月20日発行から転載)

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