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瀬戸内海における今後の環境保全の方策の在り方について

─中央環境審議会から「答申」出される─

環瀬戸内海会議 顧問 末田一秀

3月25日、中央環境審議会水環境部会瀬戸内海環境保全小委員会は、答申「瀬戸内海における今後の環境保全の方策の在り方について」を取りまとめました。

瀬戸内法が2015年に改正されて、従来の規制だけでなく、瀬戸内海を豊かな海とするために藻場干潟の保全再生や創出の措置を講じることや、湾、灘その他の海域ごとの実情に応じて取り組むことが打ち出されました。改正法附則では、施行後5年を目途として栄養塩管理の在り方などについて検討を行うとも書かれていました。こうした状況を踏まえ、昨年6月に諮問が行われ、計4回の関係者ヒアリングを含む8回の審議を経て、答申に至りました。

答申では、「改正法の施行から5年を迎えようとする今日の瀬戸内海においても、湾・灘ごと、更には湾・灘内の特定の水域によって、栄養塩類の増加が原因とみられる課題と減少が原因とみられる課題が入り組んで存在している状況は解消されておらず、これらの課題を同時に解決することが必要な状況」としています。水域ごとの協議検討を進めるため、改正法で打ち出された湾・灘協議会は、関係13府県のうち5県計7協議会の設置(本年1月現在)にとどまることが現状欄に記載されています。

注目されている今後の栄養塩類の管理等による生物の多様性及び生産性の確保については、「管理対象の水域、栄養塩類濃度の目標値、管理計画等の設定、対策の実施、効果や周辺環境への影響の評価、管理への反映等のPDCAの具体的な手順を示すとともに、これらの実施体制の在り方の明確化を検討する必要がある。この際、地域の関係者の合意形成が必要であり、この合意形成に当たっては、湾・灘協議会等の場の活用をPDCAの手順に位置付けることを検討する必要がある」とされています。どのように湾・灘協議会の設置・活用を推進していくのか、具体策が見えてこないことは問題でしょう。「藻場・干潟・浅場等の保全・再生・創出を進めるため、基本計画や府県計画において具体的な目標や実施計画(ロードマップ)を盛り込むことを検討する必要がある」とされていることは、今後の運動の足掛かりとなるかもしれません。

水環境を評価・管理する制度的基盤については、「水質総量削減制度と栄養塩類管理の仕組みをいかに調和・両立させるかを検討することが必要」としていて、新たな考えを打ち出すところにまでは至っていません。地域資源の保全・利活用に係る取組の推進については、「「生物多様性の観点から重要度の高い海域」や「同湿地」をはじめとする生物多様性の観点等から重要な瀬戸内海にける海域や干潟等について、その価値の保全上適切な保護区制度等を活用し、保全等に努めることが必要」などとされています。

環境省では、本答申をもとに「瀬戸内海環境保全基本計画」の見直し作業を行うものと思われます。また基本計画の改定を受けて、関係各府県の「瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画」も見直し作業が行われることになります。そのような大元の「在り方」議論に、環瀬戸内海会議として十分な取り組みができなかったことの自戒を込めて、報告とします。

(JAWAN通信 No.131 2020年5月20日発行から転載)

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