トップ ページに 戻る

和白干潟の自然だより(秋~冬)

山本廣子

◆ウラギクの綿毛 キク科 準絶滅危惧(環境省) 絶滅危惧ⅠB類(福岡県)

ウラギク(ハマシオン)は海岸の塩分を含む湿地に生える多年草です。以前は大群落が見られましたが、最近はアシ原入り口付近やアシ原の中道にアシに混じって生えており、それほど多くはありません。

高さは25~55cm、細い葉がついています。花は10月頃に咲き、淡紫色で優しい匂いがします。北海道から九州まであるそうですが、和白干潟では海の広場やアシ原付近と雁ノ巣海岸にあります。和名は「浦ギク」。花が終わった11月頃からは綿毛にくるまれた種ができます。丸くなった綿毛がとても可愛いです。

写真1-1
ウラギクの綿毛

◆カモの足跡

冬になり、和白干潟にはたくさんのカモたちが越冬に来ています。潮が満ちても残る砂洲には、満潮時に鳥たちが詰めかけて休んでいます。カモやミヤコドリ、カワウなど様々な鳥たちがいます。潮が引いて砂洲に行ってみると、たくさんの足跡が残っています。子どもたちの観察会でも、足跡を見るとどんな鳥の足跡かが話題になります。大きなサギの足跡、思ったよりも小さくて段々のあるカラスの足跡、小さなハマシギの足跡、水かきのあるカモの足跡など様々です。ここにこれらの鳥たちがいたんだと思うと、嬉しくなります。

和白干潟はたくさんの鳥たちの住処なのです。しかし最近は鳥インフルエンザなどの困った感染症が流行り、足跡のそばに落ちている糞を踏まないようにしなければなりません。

写真1-2
カモの足跡

◆オオバン クイナ科 全長:39cm

オオバンは冬鳥として和白干潟を訪れています。以前はほとんど見られない鳥でしたが、2010年頃より増え始めて2020年1月にはとうとう1000羽を超えて1262羽が越冬しました。

クイナ科の中では大きくて太っており、尾羽が無いように見えます。体は黒くて嘴は白っぽく、嘴に続く額は硬くて白く額板と言います。奈多の海岸ではオオバンの団体がほぼ全面を占めるようになりました。頭部を盛んに前後に動かしながら泳ぎます。泳ぎも潜水も得意で、潜ってアシの若葉や海草などを食べています。足の指に特異な水かきがあり、弁足というそうです。歩くところは余り見かけませんが、足跡は可愛いです。

写真1-3
オオバン

★ 冬の和白干潟のしぜん ★

和白干潟は自然海岸のある干潟です。冬のアシ原ではクコやノイバラ、シャリンバイ、トベラなどの木の実が豊かになっており、シロハラやツグミが見られます。ウグイスの地鳴きも聞こえ、アシ原の中は暖かです。大都会福岡市の中にこのような豊かな自然が残っているのは、貴重なことだと思います。未来の子どもたちにぜひ残したい自然ですね。

冬の和白干潟には北西の風が吹きつけ白波が立ち、引いた干潟には砂紋が美しく残ります。寒いのでウミニナも干潟に潜ってしまい、何もいない砂浜に見えます。12月には冬鳥がそろいました。淡水ガモ、海ガモ、カイツブリ類、シギ・チドリ類など。今冬は久しぶりにハマシギやシロチドリの群れが帰ってきました。もっともっと回復してほしいですね。

写真1-4
ハマシギの群れ

JAWAN通信 No.134 2021年2月28日発行から転載)