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石垣リゾート&コミュニティー計画をめぐる動き

カンムリワシの里と森を守る会、アンパルの自然を守る会
山崎雅毅

石垣市によるユニマット社への18ha市有林無償貸与は違法である

私たち2団体と原告訴訟団5名は、「石垣リゾート&コミュニティー計画」の事業化を止めるため、9月15日に那覇地方裁判所に2つ目の訴訟(注1)を提出した。理由は、「石垣市がユニマット社に市有林18haを無償貸与することは違法である」ことを石垣市行政監査委員に提出したが、想定通りに「棄却」したからである。その際に出したのが以下の声明である。

石垣市のユニマット社への「森林貸与」に関する

「住民監査請求」却下、棄却について(要旨)


請求人 東山盛敦子、井上志保里、島村賢正、渡久山修、床田和隆

カンムリワシの里と森を守る会共同代表 東山盛敦子、山崎雅毅

アンパルの自然を守る会共同代表 島村賢正、山崎雅毅


2023年9月8日


8月22日付で、石垣市監査委員(前原博一、石垣達也)は、5人の石垣市民が行った住民監査請求を棄却した。5人の請求人にとって想定内のことで、今後訴訟になる。

住民監査請求の要点は、ゴルフ場が併設されているリゾート開発に必要とされる「残置森林率・40%」を確保するために、石垣市の森林(行政財産)約18ha(その他はユニマット社所有地)を㈱ユニマットプレシャス社に無償で貸与することの「違法性」を問うものである。

ユニマット社が所有する事業予定地約127haはウガドゥカーラの沢周辺を除いてはほぼすべて更地にされる。沖縄県で最大規模と想定されるホテル519室とゴルフ練習生用宿泊施設66室、18ホールのゴルフ場で埋め尽くされるためである。これは市長公約で実施されるものであるが、519室もの巨大ホテル群ができるという説明を石垣市民は知らない。「ゴルフ場がないのでゴルフ場が必要という説明のみ」である。必要な「残置森林」がユニマットの事業用地では確保できないために石垣市民の財産である森林の無償貸与が必要になったのだが、必要な説明もない。

一営利企業であるユニマット社に利益提供をしなければならないことを知る市民は少ない。ユニマット社は自身の事業用地内でやりくりすべき事である。市民の了解も、議会の承認も必要としない「無償貸与」のため、市民に見えない「庁議」によってすべてが実行されている。

ここは広大な「市民の森」の一部でもある。しかし、市民の森の範囲を変更した形跡もない。無償貸与の森林地域には「開発計画」がないから問題はないとしているが、市民の多目的の保養施設として、今後整備されることが想定されている場所である。沖縄県の了解を得た形跡もない。

さらに重大な問題は、履行されなければならない「自然保護対策」が全く不十分なままであるということだ。

①事業用地内に生息する特別天然記念物・カンムリワシの保護対策が全くない

②1日700トン弱も大量使用される地下水による自然環境(事業用地内、アンパル、名蔵湾)に与える影響について未調査である。事業用地内に生息するキジ、クジャクなどの外来種対策もなく、開発がもたらす近隣農家への影響も未知数である。新たに新亜種として確認された「イシガキパイヌキバラヨシノボリ」も事業用地内にある。

③ウクライナ戦争の影響もあり牧草地不足による市内畜産業に対する対策も未定であり、畜産業への補償もない。

④石垣島周辺は日本最大規模の石西礁湖に代表されるサンゴ礁地帯であり、サンゴが農薬に弱いことは通説であることから、海水温上昇によるダメージの上にさらに農薬が追い打ちをかけることになるだろう。

以上の主な論点はすでに何度も沖縄県、石垣市に提出済みである。今後も沖縄県、石垣市と粘り強く交渉を継続するが、「地域未来投資促進法」で承認済みであるとしても、未解決の課題が山積していることも事実であり、「農地転用、開発申請の承認」には越えなければならないハードルは高い。私たち「申請人」は訴状を提出した。10月末には第1回公判があるだろう。訴訟に必要な費用捻出のために「寄付」を募り「クラウドファンディング」も開始する。(以上)

9月15日、那覇地裁に訴状を提出した。これは石垣市長を被告とするもので玉城知事を被告にしてはいない。沖縄県とは交渉を続けるつもりである。しかし沖縄県との関係もぎりぎりのところまで来ている。残っている手続きは「農地転用承認」と「石垣リゾート&コミュニティー計画事業の審査と承認」だけである。相当丁寧に「審査」しているということは、県議会議員等の情報からもうかがえた。しかし「審査」は永久に続くものではないので、沖縄県はいずれ「承認」せざるを得なのではないかと想定している。経産省が事業承認してからすでに3年半を超えている。5年以内の事業着工が法的に義務付けられているので、事業承認も近いのだろうと想定している。

自然保護について具体的対策は何もないのが現実であり、石垣島の自然が想定以上に痛めつけられるだろう。発見された新亜種イシガキパイヌキバラヨシノボリ(注2)について、ユニマット社は「当社の用地内を無断で通行して発見されたものであり、『存在しない』」と明言し、かつ、関係部署ではない沖縄県行政管理課を通じて我々に「立ち入り禁止」を通告してきた。高校生物部やアンパルの自然を守る会が自由に出入りして調査や自然観察をしてきた場所であり、私たちとの意見交換会で石垣支店長は「自由にどうぞ」と発言して来た事実も覆した。

(注1)最初の裁判では、石垣市は相当苦慮しているようで、裁判を延期している。すでに存命していない行政書士側の資料を収集し反論しようとしている。これまで3回の公判では「50年前の空撮で写っている農道、里道があることを否定できない」「時効を過ぎていても公有財産の場合は民間の損失を補償しなければならない」と主張するなど、相当混乱をしている。次回公判は未定。

(注2)イシガキパイヌキバラヨシノボリが新亜種として学会で認定される可能性が高く、DNA鑑定待ちである。絶滅を心配する魚類学会、美ら島財団(沖縄万博水族館)などの学会やWWFジャパンの支援の下に「希少種調査」を継続している。沖縄県の許可を得て調査し、生態保存にも取り組んでいる。


寄付、クラウドファンディングのお願い!

2つの裁判が進行します。弁護士費用は手弁当です。沖縄県庁などへのロビー活動も自腹です。カンムリワシの舞う農園づくりにも費用が必要です。クラウドファンディングは下記でお願いします。

 ゆうちょ銀行からは

口座名義 カンムリワシノサトトモリヲマモルカイ

記号番号 17080-20709051

 他銀行からは

銀行名 ゆうちょ銀行(金融機関コード:9900)

口座名義 カンムリワシシノサトトモリヲマモルカイ

店名 七〇八(ナナゼロハチ) 預金種目 普通

店番 708 口座番号 2070905




JAWAN通信 No.145 2023年11月1日発行から転載)