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瀬戸内海の保全策を提言

~環瀬戸内海会議~


環瀬戸内海会議(環瀬戸)は昨年12月12日、環境省、国土交通省、農林水産省の3省と面談し、瀬戸内海の環境保全策に関する要請書と「未来への提言」を提出した。要請書は、陸・川・海の物質循環を断絶させる人工構造物は最小限にすることや、生物多様性国家戦略、生物多様性地域戦略の思想を環境政策に盛り込むことなどを求めている。埋め立ての全面禁止や、湾灘ごとの協議会設置、湾灘別漁獲統計の復活も要請した。

(編集部)

環境省、国土交通省、農林水産省の担当者(左側)に要請書を手渡す環瀬戸内海会議の役員=2023年12月12日、衆議院第一議員会館(中山敏則撮影)

環瀬戸内海会議(環瀬戸)は沿岸11府県の市民団体で構成するネットワークである。結成は1990年6月。「瀬戸内海を毒壷にするな」が合言葉だった。

環瀬戸は2022年10月、「瀬戸内法50年プロジェクト」を立ち上げた。瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)が2023年に制定50年を迎えるのを機にさまざまなとりくみを進めてきた。117漁協から回答を得たアンケートや、66漁協への聞き取り調査、沿岸11府県に対するアンケート調査、二度にわたるシンポジウム開催などである。これらを通して浮上した諸課題にとりくむため、瀬戸内海の未来に向けた「未来への提言」をまとめた。

3省との面談では、環瀬戸が提出した要請書についてやりとりがされた。

3省の担当者(左奥)と面談する環瀬戸内海会議のみなさん=2023年12月12日、衆議院第一議員会館(中山敏則撮影)

◆海洋保護区の地図公開

愛知目標は2020年までに「海の10%を保護区にする」としている。要請書は、愛知目標に沿った瀬戸内海の海洋保護区をすべて地図で公開するよう求めた。環境省はこう答えた。「自然公園や自然海浜保全地区などを一つひとつ見ていく必要がある」。

この回答にたいし、環瀬戸の湯浅一郎共同代表は述べた。

「それでは意味がない。どこが海洋保護区かということを住民は把握していない。自治体もあまり把握していないようだ。愛知目標に対応した海洋保護区はどこなのかがわかるようにしてほしい。たとえば『生物多様性の観点から重要度の高い海域』が瀬戸内海には57海域ある。そのうち7割ぐらいが海洋保護区になると思われる。残りの3割ぐらいは海洋保護区に含まれていない。自分の住んでいる場所の近くが生物多様性にとって重要だということがわかるかどうかは大事なので、ぜひお願いしたい」

環境省はこう答えた。

「ご指摘のとおりだ。わかりやすく伝えるというのは大事なことなので、そのように努めたい」

瀬戸内海の海域区分

◆埋め立ての全面禁止

環瀬戸の阿部悦子共同代表は、愛媛県今治市の織田が浜を例にあげて埋め立ての全面禁止を強く求めた。こう訴えた。

「かつての織田が浜は延長が約2キロで、すばらしい浜だった。瀬戸内海で最後まで残った白砂青松の浜だった。この浜の埋め立てをめぐって裁判で争った。しかし瀬戸内法は軽微な埋め立てまでは規制していないということで、一部が埋め立てられてしまった。これは『瀬戸内法は役に立たない』と裁判所が言ったのと同じだ」

「織田が浜を埋め立てたため、北側と南側の浜がメチャクチャになった。砂の流出を防ぐため、コンクリート構造物でガチガチに固められた。近くの自治会の方がこんな話をしてくださった。『織田が浜が埋め立てられてから砂がどんどん流出したので、こうするしかない。もう浜がなくなる」と。『軽微な埋め立て』と言うが、埋め立ててから40年たったら周辺の浜がこんなに変わるといういうことを検証していただきたい。子どもたちが海で泳ぐ光景が消えた。貝掘りの光景も消えた。埋め立てを全面禁止しなければ瀬戸内海はどんどん悪くなる」

瀬戸内海会議のみなさん=2023年12月12日、衆議院第一議員会館(中山敏則撮影)

JAWAN通信 No.146 2024年2月10日発行から転載)