セマングム干拓、諫早湾干拓、泡瀬干潟埋立の中止と見直しを要請

▲9月28日の国際湿地シンポ
 日本湿地ネットワークでは、東京ウェットランド・ウィーク「救え!東アジアの湿地と干潟」の一環として、9月28日に在日本韓国YMCAアジア青少年センターで国際湿地シンポジウム2003 in 東京を開催しました。翌29日には、同シンポジウムで主要なテーマとなった、韓国セマングム干拓、諫早湾干拓、泡瀬干潟埋立に関して、事業の中止と見直しに関する要請文を、韓国環境運動連合、セマングム干潟生命平和連帯、日本野鳥の会、日本自然保護協会、世界自然保護基金ジャパンと共同で、韓国政府ならびに日本政府に対して要請しました。提出した要請文は以下の通りです。

2003年9月29日

大韓民国大統領 盧 武 鉉 様
日本国内閣総理大臣 小泉純一郎 様

韓国セマングム干拓事業・諫早湾干拓事業・中城港湾(泡瀬地区)公有水面埋立事業の中止と見直しに関する要望書

日本湿地ネットワーク  代表  辻 淳夫
韓国環境運動連合  事務総長  徐 注 源
セマングム干潟生命平和連帯  共同代表  ムン・ギュヒョン
 スギョン
 イ・ビョンチョル
 チォェ・ヨル
(財)日本野鳥の会  会長  小杉 隆
(財)日本自然保護協会  理事長  田畑 貞寿
(財)世界自然保護基金ジャパン  事務局長  日野 迪夫

 私たち、日本と韓国の環境保全活動団体は、「それぞれの国の湿地を守るには、湿地生態系食物連鎖の最高位にある生物の一つである水鳥の渡り経路全体も保護しなければならない」、という立場から、互いに連携しつつ、湿地の保全のための活動を行ってきました。特に、韓国のセマングム地域で進行中の干拓事業と日本の諫早湾干拓事業に関しては、韓国環境運動連合と日本湿地ネットワークが最重点項目として、資料交換、中止要請を行うとともに、両国内外の他団体と連絡を取りながら、韓国大統領への手紙キャンペーンなども提起してきました。

 アジアのすべての地域で行われてきた開発の方向性に、韓国、日本から変化が見えてきています。韓国では湿地保全法が制定され、ヨンサン江第四期工事その他の中止や、セマングム干拓事業の1年間の見直し検討期間などが設けられ、開発に対する姿勢は明らかに変わってきています。また、日本では藤前、三番瀬などにおいて湿地の保全を基本に置く方向が作られ、諫早湾干拓事業については有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会などで産業維持に対する環境保全の必要性、保全対策の検討が行われ始め、また自然再生推進法が施行されました。しかしそれにもかかわらず、セマングム干拓事業は推進が決定され、諫早干拓、泡瀬干潟の開発は推進されています。これらの開発の進行は、日本や韓国の各地で、依然として道理を無視した湿地の開発が強引に進行されていることを象徴しており、保全・再生の美名は、更なる自然破壊容認の口実となりかねないことを示しています。日本は1980年からラムサール条約の締約国であり、条約年会費では最大の貢献をして条約を推進する立場にあり、韓国は東アジア経済を牽引し、今後条約の中でも重要な役割を占める立場にあります。この両国における乱開発は、アジアにおける乱開発を正当化し助長することにつながる恐れがあります。私たちは条約の目的である「湿地の賢明な利用」をこそ推進すべきです。

 そして特に、セマングム干拓事業は、シギ・チドリ類の東アジア・オーストラリア地域の渡り経路中でも最も多くの鳥種、個体数が記録されている重要生息地のひとつを破壊するものであり、日本の湿地とそこにすむ生物、漁業資源、そしてシギ・チドリ類をはじめとする鳥類に対しても重大な影響があることが明らかです。また、7月にはソウル行政裁判所が事業執行停止決定を下しており、本案判決を待っているところです。しかしながら、韓国政府は、事業停止の姿勢を示していません。これに対し、WWFオーストラリアやバードライフインターナショナル(本部・英国)など各国の自然保護団体もこぞって懸念を表明しています。セマングム干拓、諫早干拓、泡瀬干潟埋め立ては、それぞれの国内問題だけでなく、渡り鳥の渡りルートで結ばれ共通の生態系を持つ地域の問題、そして地球全体の問題だからです。

 このたび私たちは、これら東アジアの湿地保全のカギとなる3つの事業の中止を求め、韓国の環境保護団体のメンバーを招いて国際湿地シンポジウムを、日本で開催しました。この機会を捉え、日本、韓国の賛同自然保護団体の総意として、大韓民国大統領閣下に韓国セマングム干拓事業の、日本国内閣総理大臣閣下に諫早湾干拓事業、中城港湾(泡瀬地区)公有水面埋立事業事業の中止や見直しを要請します。

以上

なお、この文書は、韓国・日本の以下の省庁大臣に宛て、写しをお送りしています。

韓国:
*ホ・サンマン農林部長官
*ハン・ミョンスク環境部長官
*チョエ・ナクチョン海洋水産部長官

日本:
*亀井 善之 農林水産大臣
*小池百合子 環境大臣

この文書についてのお問い合わせは

日本:日本湿地ネットワーク 運営委員 柏木 実
191-0052 東京都日野市東豊田3-18-1-105
Tel/Fax: 042-583-6365 / e-mail: TAE04312@nifty.com

韓国:環境運動連合 生態保全局幹事 ソン・ソンヒ(孫盛喜)
110-042ソウル特別市鐘路区樓下洞251
Tel: 02-735-7000 / Fax: 02-730-1240
e-mail: sonsh@kfem.or.kr


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