国際湿地シンポジウムin福岡 決議文

セマングム・諫早・泡瀬を象徴とする日韓両国の湿地の危機を回避するために

 日韓両国の湿地は人々の生活を支えているだけでなく,東アジアにおける渡り鳥の渡りルートの保全をはじめとした国際的な湿地保全にとって,欠くことのできない重要な構成要素です。

 それにもかかわらず,両国の湿地の現状は危機的です。

 日本においては,藤前や三番瀬の保全に関する成果はあるものの,いまだ,湿地保全の法制度は不十分で,ラムサール条約の成果は政策や制度に活かされないままです。

 韓国においては,湿地保全法は早くに制定されていますが,開発と、保全や賢明な利用の対立の中、重要湿地の保全に対してはほとんど機能していません。

 とりわけ,日本においては,諫早湾干潟を消滅させる諫早湾干拓事業,泡瀬干潟の埋立事業が,韓国においてはセマングム干潟の大干拓事業が,両国における湿地乱開発の象徴であり,これらの乱開発をストップすることなしには,真の湿地保全の政策を両国において定着させることは不可能です。

 諫早湾干拓事業は,1997年4月14日の諫早湾閉切り以来,有明海全体にその悪影響を及ぼし,漁民の生活の基盤を覆し,沿岸の地域経済・社会・文化を根底から覆す,有明海異変と呼ばれる被害をもたらしています。

 泡瀬干潟の埋立事業は,いまや埋立の必要性・合理性が欠如し時代に相応しくないことが誰の目にも明らかとなり,また着工の前提となる海草の移植などの代償措置に科学的見通しがないことも明らかになっているにもかかわらず,強行されつつあります。

 韓国のセマングム干拓事業は、将来の賢明な湿地利用の可能性を摘み取るのみならず,実施された減反政策により農地造成が不要であることが明らかであり,事業推進の前提が調整池の水質改善であったにもかかわらず,具体的改善策の見通しが全くないまま強行されています。

 昨年11月,スペインのバレンシアで開催されたラムサール条約第8回締約国会議においては,国際的な湿地保全の取り組みがさらに大きく前進しました。また,ラムサール条約の中心的テーマでもある先住民・地域住民の声を集めたNGOのプレ会議は,世界の湿地のなかで東アジアのこれらの湿地について固有名詞を挙げて保全の必要性を強調し,本会議に訴えました。

 わたしたちは,これらのことを踏まえて,それぞれの湿地乱開発の事業者に要求します。

 世界とそれぞれの国と,地域の人々の声を直ちに受け入れ,早急にこれらの湿地乱開発を止めてください。

 その上で,湿地保全の国際的な取り組みのなかで,日本と韓国の両国が名誉ある地位を占める政策と制度と実績を達成してください。

 今日,わたしたちは,日韓両国の湿地保全に焦点をあてた本シンポジウムの名において,これらのことを強く求め、わたしたちも保全のための努力を続けることを確認します。

  2003年3月1日

国際湿地シンポジウムin福岡
「泡瀬・諫早・セマングム」
日本湿地ネットワーク


>>トップページ >> LIBRARY目次ページ