シギチドリ類重要生息地ネットワークへの
登録申請が決まった球磨川河口干潟

高野 茂樹(八代野鳥愛好会)

 八代市は、「八代海(不知火海)球磨川河口干潟」を東アジア・オーストラリア地域シギチドリ類重要生息地ネットワークへの登録申請を決めました。

球磨川河口干潟はこんな干潟です

 球磨川河口干潟は、九州山脈に端を発した球磨川が、川辺川などの水を集めて八代海(不知火海)に注ぐ河口に発達した干潟です。球磨川によって多量の土砂が運ばれ、昔は砂質の干潟でしたが、現在ではやや砂泥質の干潟となっています。球磨川河口には周辺部を含めると1000haを越す干潟があります。

 春と秋にはシロチドリ、ダイゼン、ハマシギ、キアシシギ、ソリハシシギ、オオソリハシシギ、アオアシシギ、チュウシャクシギ、ダイシャクシギ、ホウロクシギなど約40種類が多数飛来します。ソリハシシギ、キアシシギ、チュウシャクシギの3種類が、アジア・オーストラリア地域シギチドリ類重要生息地ネットワークの登録基準を越えており、今年早々、八代市はシギ・チドリ類ネットワークへの登録申請を決意しました。

 世界的に重要な干潟であることが市民の皆さんにも少しずつ理解していただきつつあります。シギ・チドリ類の渡来を通して、不知火海の干潟はもちろん生態系の保全につなげられればと思います。

 また、冬にはセグロカモメ、ユリカモメ、ウミネコなどのカモメ類が5000羽以上飛来します。ズクロカモメやオオズグロカモメの飛来も見られます。オオズグロカモメが国内で定期的に飛来する唯一の場所であることは全国に知られ、遠くからたくさんの方が訪れています。

 今年の冬は、前川河口干拓地でクロツラヘラサギが越冬し、干潮時にはこの干潟に飛来するようになりました(※球磨川は八代市内に入って前川、南川そして球磨川の3つに分かれて八代海に注ぎます)。後背地の水田には数羽〜10数羽のマナヅルやナベヅルの飛来・越冬も見られます。野鳥の飛来数の多さと多様性が維持されている干潟です。

 八代海は不知火海とも言われますが、これは夏の大潮の夜、海上に不思議な火が浮かぶことから名づけられました。その現象は現在でも見ることができます。また、球磨川河口から天草諸島を望むと干潟の向こうに島々が浮かび、そこに夕日が沈む光景は日本一の“ふるさとの自然美”であると誇りを持っています。この風景と自然環境をぜひ子どもたちに伝えなければなりません。

八代海の環境と川辺川ダム

 昭和30年頃から球磨川には市房ダム、瀬戸石ダム、荒瀬ダムが作られ、干潟や八代海(不知火海)の生態系にも影響が見られ、漁獲量が以前の1/3に減ったり、海苔養殖をされる方が減ったりしています。アサリやクルマエビが採れなくなり、赤潮が頻繁に発生し、貧酸素状態になる青潮も起こるようになったと漁師さんは言っておられます。
 ご存じのように現在、支流の川辺川では大形のダム建設事業が進められております。是非を問う討論集会が何度も開かれていますが、私たちはこれ以上、八代海(不知火海)の生態系が変化しないよう建設が中止されることを願っています。
 今度の登録によって、多くの方に八代海の干潟・環境に関心を持っていただき、八代海と九州山脈がダムのない川でつながった健全な「海・山・川流域生態系」が回復するように手をつないでいければと思います。

(JAWAN通信 No.75 2003年6月1日発行から転載)