救え!東アジアの湿地と干潟
――東京ウェットランド・ウイークを開催

青木智弘(諫早干潟緊急救済東京事務所)

9月28日のシンポジウムで、韓国のセマングム干拓問題について報告する韓国環境運動連合の朴進燮さん
 JAWAN、諫早干潟緊急救済東京事務所、有明海漁民・市民ネットワーク、NPO現代座は、2003年9月に『東京ウェットランド・ウィーク 救え!東アジアの湿地と干潟 有明海・沖縄・韓国――湿地保全を考えるシンポジウムと演劇公演の4日間』を開催しました。

 初日27日は、諫早湾干拓で影響を受けた有明海に関するシンポジウム「有明海の潮流変化と環境破壊」を行ない、深刻な漁業被害との因果関係を検証しながら、干拓事業の妥当性を疑いました。また28日は、「諫早・泡瀬・セマングム―救え!東アジアの湿地と干潟」と題し、国際湿地シンポジウムを開催しました。

 国際湿地シンポジウムには、国内から、有明海、瀬戸内海、釧路湿原、東京湾・三番瀬、藤前干潟、敦賀・中池見湿地、吉野川河口干潟、八代・球磨川河口干潟、沖縄・泡瀬干潟などの、環境保全に取り組む市民団体のパネリストが報告を行なっています。
 保全や自然再生にむかう湿地や干潟がある一方、沖縄県・西表島ではリゾート開発、石垣島・白保では空港建設といった開発行為で、深刻な危機に瀕している生態系が依然として多いことも明らかになりました。また、環瀬戸内海会議は、環境保全の法律としては問題点の少なくない瀬戸内法改正の必要性を訴えました。
 韓国からは環境運動連合生態保全局が参加、セマングム干潟の貴重な生態系や、市民運動「三歩一拝」などについて詳細に紹介し、JAWANの柏木実さんはロシア、ドイツなどと共同で行っている、NGO国際共同のハマシギ・ヘラシギ保全プロジェクトを報告しました。屋久島から作家の星川淳さんを招いて、特別講演も行なっています。文化や歴史から、スケール大きく環境や文明の問題を捉えたお話は、感慨深いものがありました。

 27日、28日のシンポジウムは盛会でしたが、日本では干潟保全の市民運動が―他のあらゆる市民運動と同様―専門分化しすぎていることは、問題です。日本の環境保護運動の多くは、守ろうとしている自然環境について、高度に専門的な知識を有し、学術専門家との協働もすすんでいますが、福祉や宗教、芸術、経済や農業、平和や消費生活、人権、労働運動などとの連携は、たいへんに遅れています。
 分野ごとの市民運動の孤立は、世界的に見ればきわめて特殊なケースです。環境保護運動の努力のみで解決することではありませんが、好ましい事態ではないでしょう。その点、韓国の「三歩一拝」は、複数宗派の宗教運動や、農民たちとの連携が強固で、運動が運動ごとに分断されやすい、連携や共闘下手な日本人とって、学ぶところが大きかったと思います。

 多くの人々の関心を呼びおこした「虹の立つ海」演劇公演(NPO現代座、29・30日)は、ウエットランドウイークの締めくくりにふさわしいものでした。タイムスリップのSF趣向が、この劇に、フィクションにしかできない強いメッセージ性を与えていました。干潟保全のみならず幅広く環境問題の重要性を、観客に痛感させる傑作だったと思います。

(JAWAN通信 No.77 2004年2月20日発行から転載)