天草の自然を護るための新たな展開

生駒研二(天草の自然を護る会事務局長)

 2005年1月17日、天草郡河浦町議会から、私たちが提出していた『河浦町久留字前の尾地区の「し尿処理施設」建設反対に関する請願』に関する審議結果が届いた。「平成16年5月31日付で提出された次の請願書は、本町議会において審議の結果、採択と決定いたしましたので通知します。」との嬉しい知らせだった。21年前の1984年、九州電力苓北火力発電所建設反対闘争の中で結成された【天草の自然を護る会】は、天草各地の自然破壊につながる開発行為(国営羊角湾締め切り干拓事業、西武ゴルフ場建設、新和町横島原子力発電所建設、本渡港マリンタウン計画等々)に対し反対闘争を組織し、大きな成果をあげてきた。だが、このような形で議会が請願を採択してくれたことは一度もなかった。

■苓北火力発電所に関する写真
絶景を誇る天草西海岸に、巨大な苓北火力発電所の建設が強行された。 苓北町民の会の団結小屋《あつまろう屋》。
天草環境会議の交流会場だ。

 私たちの活動が自分本位のものでなく、真に天草のことを考えてのことであるということが多くの人に認知されてきたとの思いがある。この認知の場が、20年の歴史をもつ『天草環境会議』と、市民向け学習の場として位置づけている1998年から50回の講座を開催した《地球市民講座》である。講師には、前者は日本環境会議の協力を得、日本を代表する学者の方を、後者は天草の地にしっかり根を張り活動している方を、天草版地球市民と認定しお願いしている。本渡市長には2度登場いただいている。テーマは環境問題を中心に、平和問題や天草の宝シリーズ等々。基本的に天草を自然豊かで平和に暮らせる島にするために何をやらなければならないかを意見交換できるようにしている。

■羊角湾に関する写真
中止になった国営羊角湾締め切り干拓事業の捨石。国は後片付けもしない。 羊角湾を考える会の看板。天草各地の自然保護運動を繋ぐのが私達の役目だ。

 問題の核となる地元の人々が「このままでは本当に自然が壊される」との素朴な思いを声に出せるようになったことも大きいと感じている。私たちが20年間声をあげつづけてきたことにより、『天草の自然を護る会』は駆け込み寺になり、天草を憂うる人々は声をあげられるようになった。こうしてつながった天草内の環境保護を考える団体は以下のようになる。苓北火電建設反対町民の会、砂リンピック実行委員会、地球市民講座、美しい天草づくりネットワーク、食と農を考える天草フォーラム、浦川農園“自然熟”、天草の海からホルマリンをなくす会、新天草学林プロジェクト、天草の海を考える会、羊角湾を考える会、河浦の自然を護る会、山仕事仲間の会、竜ヶ岳の海と食を護る会、熊本21労組天草会議、連合天草、そして本渡市である。

■西部コルフ場予定地に関する写真
西部ゴルフ場予定地だった天草郡五和町の丘陵地帯。有明海が見える 西部ゴルフ場進出を阻むための立木トラスト。1本1000円で協力してもらう。

 最後に、現在、天草の環境問題で私たちが取り組んでいる問題を紹介しよう。本渡市との共同作業「本渡干潟のアサリ再生計画」。羊角湾のし尿処理施設建設と埋立反対闘争。有明海・不知火海フォーラム(有明海では諫早問題・不知火海では川辺川ダム・大築島埋立問題を中心に)。天草の海からホルマリンをなくす運動。熊本県海岸保全基本計画策定への参画。「新天草学林」プロジェクトへの参画等々である。今後も、自然破壊につながる開発行為に対し声をあげつづけるとともに、自然を回復させる取り組みにも力を入れていきたい。

本渡干潟再生の取り組みに関する写真
本渡干潟を調査する堤先生(熊本県立大学)のチーム。熊本行きのマリンビューが見える。 アサリボランティアのみなさん。市民・役場・漁協・研究者・自然保護グループの共同作業だ。

(JAWAN通信 No.80 2005年3月20日発行から転載)