新妻香織(はぜっ子倶楽部代表) それが平成15年度、16年度と2カ年に渡り、県の自然保護グループが環境省から助成を受けて「重要湿地松川浦総合調査」を行ったところ、驚くべき発見の連続でした。松川浦は貴重な動植物が集中して生息する県内では尾瀬に次ぐような「ホットスポット」であることが判明。それのみか、仙台湾の最南端に位置するこの浦は、魚の幼稚魚やプランクトンなどが育って外洋に出ていくための「子宮」か「揺りかご」みたいな場所であることもわかったのです。つまり、仙台湾の生物の豊かさは松川浦に起因していたというのです。 私たちは2000年に「はぜっ子倶楽部−美しい松川浦を21世紀の子供たちに残す会」という環境保護団体を立ち上げ、50名ほどの会員と共に、さまざまな活動を毎月行っています。松川浦の問題を松川浦という海域にとどめることなく、流れ込む川、上流の山、あるいは周辺の農地や私たちの生活などトータルで捕らえながら、毎月さまざまな学習会を開催し、市民に広く活動への参加を呼びかけています。 さて、はぜっ子倶楽部の活動は講義、課外授業、実習に分けることができます。 講 義 (松川浦やその周辺、環境一般についての学習会) 観光地、漁業の基地としての松川浦、伝承している漁村の文化、森や松食い虫の問題、松川浦の貴重な動植物、あるいは田んぼの蛍…… 。毎年、相馬市長に環境政策について語ってもらうなど、行政にもさまざまな働きかけをしています。 課外授業 (松川浦やその周辺で自然に親しむイベント) 「松川浦で楽しむ」は、大きな活動のポイント。江戸時代に相馬藩主が公家に和歌を詠ませた松川十二景をバスツアー、干潟に出て蟹の観察、浦内の島に生息するサギのコロニー訪問、川を溯り分水嶺を訪ねる、鮭の孵化場を見学して鮭料理に舌つづみなどなど。子供連れで参加される方も多いです。 昨秋初めて行った松川浦一周ウォークは、20キロ近い行程でしたが、変化に富んだ美しさは疲れを忘れさせ、その後3回同じコースを歩いたという方があったほどでした。
実習活動 (水質調査、清掃、植林、カワアイ調査) 勉強したり遊んだりしているだけでは駄目。実践をしなければ何も変わりません。はぜっ子倶楽部も実践活動に力を入れています。松川浦に流れ込む宇多川と小泉川の6地点の水質を、3カ月に1度調査。希少種の巻き貝カワアイの調査は、東北大学の鈴木孝男先生の指導を受けながら、相馬高校の生物クラブの皆さんと行っています。その他、野外に出るときは必ずごみ袋を持参し、ゴミを拾いながら歩くということが定着してきました。 ところで、私たちの目指す松川浦というのは、果たしてどのような姿なのでしょう。きっとそれは「さまざまな環境に多種多様な生物が重なり合うように生息している共生の世界」ではないでしょうか。そして少なくともまだ、豊かな生物層が残っている松川浦の環境を、これ以上悪化させることなく、「人」も健全な営みができるよう、自然の一部として、他の生物らと共生を目指すべきなのでしょう。そのためには地道ではあるけれど、「見続ける」ということが大切だと、はぜっ子倶楽部は考えるのです。
(JAWAN通信 No.81 2005年6月30日発行から転載) |