「ラムサール条約湿地を増やす市民の会」が
条約登録候補地リストを公表しました

浅野正富 ラムサール条約湿地を増やす市民の会事務局長

 皆さんは、「ラムサール条約湿地を増やす市民の会」(以下「ラム市民の会」と略称で表記します)をご存じですか。「ラムサール条約登録湿地を増やす議員の会」は知っている方でも、「ラム市民の会」というのは聞いたことがないと首を傾げられているかもしれませんね。実は、昨年6月、設立されたばかりの組織なのです。
 とは言っても、共同代表7名は皆さんご存じの方ばかりです。JAWANの代表の辻淳夫さんはじめ、蕪栗沼の呉地正行さん、三番瀬の牛野くみ子さん、渡良瀬遊水池の高松健比古さん、中池見の笹木智恵子さん、吉野川の山内美登利さん、そして球磨川河口の高野茂樹さんです。
 なぜ、ラム市民の会が設立されたかと言うと、2005年11月にウガンダの首都カンパラで開催された第9回ラムサール条約締約国会議で、日本は20か所の重要湿地をラムサール条約に追加登録し、それまでの13か所と合わせ33か所の条約湿地の登録を果たしましたが、追加された20か所には、蕪栗沼や中海・宍道湖など以前から強く登録が望まれていた湿地もあるものの、尾瀬や奥日光の湿原のように国立公園等に指定され従来から保全されている湿地が多数を占め、湿地保全に永年関わってきた人たちが望んでいるような、開発を止めて確実に保全していくべき重要湿地の条約登録が未だ進んでいないという背景があったからです。
 10年前に日本最大のシギ・チドリの渡来地で、条約登録が強く望まれていた諫早干潟が干拓事業の潮受け堤防閉め切りによって消滅し、その後、藤前の登録は実現しましたが、泡瀬、和白、吉野川、中池見、三番瀬、渡良瀬遊水池などの重要湿地は、登録されていないばかりか、今後の登録の見通しも不透明、相変わらず開発計画進行中か、一旦収まったかに見えた開発計画が姿を変えて現れそうな状況にあります。
 このまま手を拱いていては大変なことになってしまうという危機意識が、各地で湿地保全のために活動している方々の間で沸きあがり、各地のメンバーが広く連携して、私たちが条約登録を望む重要湿地について、世間に条約登録して確実に保全していくことの必要性を訴え、環境省や自治体に登録実現のための強力な働きかけをしていく目的で、ラム市民の会は設立されました。
 そして、ラム市民の会の最初の取り組みとして、2008年10月28日から11月4日まで韓国慶尚南道昌原市で開催される第10回ラムサール条約締約国会議に向け、「早急にラムサール条約に登録し保全すべき重要湿地リスト」を作成して、世間に公表し、関係省庁や自治体、「ラムサール条約登録湿地を増やす議員の会」等への登録に向けた働きかけを積極的に進めていくこととしました。
 第9回ラムサール条約締約国会議では、日本は20か所の追加登録を果たしましたが、現在、第10回ラムサール条約締約国会議に向けた重要湿地の追加登録について、環境省において、数値目標はじめ具体的方針は特に定められていません。
 このままでは、1993年に日本の釧路で第5回ラムサール条約締約国会議が開催されて以来15年ぶりに東アジアで開催され、東アジアにおける湿地の保全を推進していく絶好の機会となる韓国での第10回ラムサール条約締約国会議において、日本の重要湿地の追加登録は精々数か所にとどまり、第9回ラムサール条約締約国会議で20か所の追加登録を実現したのに比べ、重要湿地の条約登録が大幅にスローダウンし、国内で盛り上がったラムサール条約への関心や重要湿地の条約登録推進の機運が急速に萎んでしまうことが懸念されています。
 そのような中で、私たちは、昨年夏から、条約登録の基準を充たし、かつ、各地のメンバーが強く登録を望んで活動している重要湿地の選定作業を進め、2007年1月26日、「早急にラムサール条約に登録し保全すべき重要湿地リスト(第1次)」として公表し、環境省記者クラブで記者会見を行い、選定された湿地の地元でも報道機関に働きかけを行いましたので、各地で地元の湿地がリストアップされたことが報道されています。



 この第1次リストには、私たちの会のメンバーが直接条約登録推進の活動に関わっている17か所の湿地を選定しました。具体的な湿地は、北の小友沼から南の泡瀬干潟まで、上の日本地図にゴシックで名称が記載された17か所です。記者会見した1月26日には、早速環境省野生生物課と「ラムサール条約登録湿地を増やす議員の会」に、このリストを提示し、条約登録実現を求める要請を行いました。
 この17か所については、現在、パンフレットの作成が進んでおり、まもなく皆さんの目に留まることでしょう。署名活動や各種イベントなどを行って、このリストにあがった17か所の湿地を広く世間に認知してもらい、登録を望む世論を巻き起こし、行政を動かして、1か所でも多くの登録登録を実現していくつもりです。
 そして、この17か所にとどまらず、まだまだ各地にたくさんある条約への登録基準を充たしている重要湿地を「早急に条約登録し保全すべき重要湿地のリスト」に加えて、全国の重要湿地の条約登録を推進していきたいと考えています。
 「ラム市民の会」の趣旨に共鳴し、地元の湿地をリストに加えて条約登録推進の活動をしてみたいとお考えの皆さん、どうぞ下記事務局までご連絡下さい。ともに条約登録を目指してがんばりましょう。

ラムサール条約湿地を増やす市民の会事務局
〒323-0034 栃木県小山市神鳥谷1丁目6番19号
浅野正富法律事務所内
TEL 0285-25-6577 FAX 0285-25-6627

(JAWAN通信 No.87 2007年4月25日発行から転載)