泡瀬干潟埋め立て問題は、
今、大きな転機を迎えています。

前川盛治 泡瀬干潟を守る連絡会事務局長

1.泡瀬埋め立て問題は、大きな転換期を迎えています

 沖縄市東部海浜開発(泡瀬埋め立て)事業をめぐる情勢は大きな転換期を迎えています。
 沖縄市議会ではかつては全会一致でしたが、2000年ころからそれが崩れました。また東門美津子沖縄市長が誕生し、沖縄市が設置した「東部海浜開発事業検討会議」は、7カ月にわたって検討した内容を、去る7月30日に市長に報しました。「今のままでは、この事業は沖縄市の活性化にならない」「市民合意のために円卓会議が必要だ」「新たに検討委員会を立ち上げるべきだ」等が集約した意見であると思われます。「今の計画のまま推進する」という意見はゼロです。また、複数の委員は、沖縄市が再度検討する間、市長から「工事の中断を国・県に要請する」必要性を指摘しています。
検討会議を報道する2007年3月2日の琉球新報の記事。「沖縄市の活性化にならない」と市長に報告……。 浚渫現場(埋め立て区域)はザンノナミダ、ニライカナイゴウナ、ホソウミヒルモ、ヒメメナガオサガニ、ユンタクシジミなどの新種の生息地であり、ジャングサマテガイ、トウカイタママキ、フジイロハマグリ、ウミエラなどの貴重種の生息地でもある。

2.工事がそのまま進むと泡瀬干潟は、
  取り返しのつかない大きなダメージを受けます

 すでに明らかにされているように、工事区域内はホソウミヒルモ、ザンノナミダなどの新種・貴重種・絶滅危惧種が生息し、貴重なサンゴの生息地・産卵地であり、ムナグロなどのシギ・チドリ類の沖縄最大の越冬地であり、世界に誇る極めて貴重な場所であります。また、そこは県内有数の海草藻場であり、漁業・自然環境保全・地球温暖化防止のためにも大事な場所です。
 今、泡瀬干潟の価値が見直され、保全への理解が高まっています。しかし、今年も8月1日に国の工事が再開されました。今年の工事は、護岸工事の延長、浚渫工事の拡大等で、第一期工事の外形が出来上がることになり、泡瀬干潟は、取り返しのつかないきわめて大きなダメージを受けることになります。
 先にあげた検討会議の意見では、今後事業については一層の検討が必要であると指摘し、埋め立て事業の今後の是非については、東門市長が早い時期に判断していくことになっているのに、工事がこれ以上進行したら、検討会議の意見、東門市長の判断は、全く無視されることになります。

3.埋め立ての合理性のない、無駄な公共工事は止めるべきです

 この事業は、沖縄市の単独事業として進められましたが、財政面・将来性などの問題があり国の認可が得られませんでした。しかし、隣接するうるま市の新港地区のFTZ(特別自由貿易地域)の港の土砂処分場として国が参画することになり、一気に推進されました。しかし今、状況は大きく変化しています。
 埋め立ての理由(新港地区のFTZ振興、埋め立て地に海洋リゾート地を創造する)は、合理性がなく、沖縄市民・県民の合意も得られておらず、市民・県民に財政的な負担を押し付けるものであることも明らかになっています。事業の失敗は明らかに予想され、第二の夕張市になってはいけません。沖縄県包括外部監査人も、事業の抜本的な見直しを提言しています。
 その後、東門沖縄市長による「泡瀬通信施設共同使用協定書1年更新」の問題も起こりました。米軍の核戦争のための新たな基地建設・提供は許されません。

2007年2月に貝類学会で新種として発表された、ザンノナミダ。模式産地は泡瀬。写真右はザンノナミダ、貝長7mm。左は生息地(埋め立て工事区域の北東端)。写真は大須賀健氏(発見者の一人) 泡瀬埋め立て工事現場近く(将来航路として浚渫される場所)に生息するヒメマツミドリイシの産卵。(2007年6月8日、沖縄リーフチェック研究会・安部真理子氏撮影)

4.一部埋め立てられたところは
  国(環境省、国土交通省、その他)の再生事業で復活させよう

 工事は進行していますが、今工事を止めさせれば、泡瀬干潟はまだ救われます。埋め立てられた部分は、国土交通省のエコポート政策や環境省の自然再生事業、各省庁共同の事業(エココースト事業等)等で元に戻す方策も考えられます。世界に誇る貴重な泡瀬干潟を残し、ワイズユース(自然の持続的な賢い利用)が、今求められているのです。

5.東門市長の判断の時期が迫っています。

 検討会議の報告書を受けて、市長は埋め立ての是非の判断を年内の早い時期(予想では、11月末〜12月初旬)におこなうとしています。東部海浜開発(泡瀬埋め立て)事業はいよいよ正念場を迎えつつあります。

(JAWAN通信 No.89 2007年12月15日発行から転載)


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