辻 淳夫 日本湿地ネットワーク共同代表 来年10月の、韓国昌原(チャンウォン)で開かれるラムサール条約締約国会議(COP10)に向けて、両国の湿地が置かれた厳しい状況を、日韓のNGOがどう協力して切り開くか?という重い課題に、双方の熱意ががっしりと組み合った感じだった。 日本側には、1993年の釧路会議(COP5)から15年の湿地保全活動の成果と課題を総括する良い機会になった。釧路会議で、湿地、特に干潟生態系の重要性を日本の社会にアピールすることができ、3年後のブリスベン会議を経て、6年後のサンホセ会議で藤前の保全が実現し、以来公共事業の流れを変えて、三番瀬、曽根、中海、中池見などが保全されてきた。また2005年のカンパラ会議では国際的課題の「登録地倍増」を果たし、中でも蕪栗沼と周辺水田として、初めての水田が登録されて、アジア特有の湿地環境に光を当てた。しかし、日本で最大の諫早―有明海の破壊は止まらず、和白、泡瀬、渡良瀬など、重要湿地の保全がならず、釧路や三番瀬では、その「自然再生」事業に、疑念が広がっている。 一方韓国では、世界最大の自然破壊(諫早の10倍)といわれたセマングムが、国論を分けた議論の末に2006年に閉めきられ、ナクトンガンや南部沿岸湿地、漢河など、西海岸全体に開発が目白押しの状況下でラムサール会議を迎えることになり、NGOの間でも対応が異なる。そこでCOP5を経験した日本のNGOに学びたい気持ちが強かったようだ。3日間の会議や懇親会の合間にも韓国NGO同志で話し合い、渡良瀬へのエクスカーションを体験する中で、協働していく機運は一層高まったようだ。 何より希望を感じたのは、日本の宍道湖や韓国のチャンハンのように、開発側の欺瞞的誘導に負けず、漁民自ら干潟の経済価値を計算して仲間を説得し保全に導いたり、蕪栗沼周辺水田での冬季湛水・有機農業への転換など、日韓双方に、漁業者や農業者の意識を変えた重要な成功事例があることだった。それを活かして、アジアで2回目の締約国会議には、アジアならではの視点を持ったNGOからの提案と貢献をしていけそうだ。 あと1年、あらためて「COP5からCOP10の間に、何ができ、何ができなかったか?」(小林聡史さんの問いかけ)を検証しながら、韓国NGOを中心に、アジア、世界のNGOとともにプレNGO会議を開き、ラムサールCOP10を成功させよう。そして2010年には生物多様性COP10(in名古屋?)、地球の未来がこの3年にかかっている。
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