辻 淳夫 日本湿地ネットワーク共同代表 しかし、ソウルでの第2回韓日NGO湿地フォーラム開催準備が進み、柏木さんからの情報で、メリッサ(コスタリカ)や、アントニー(マレーシア)が参加することを知り、藤前保全のために名古屋まで来てくれたメリッサに御礼を言いたいと思ったところへ、エクスカーションで、あこがれの漢河、イムジン河の非武装地帯(DMZ:民間統制地域)へいくと聞いてたまらず、参加することにした。 本当に行って良かったと思う、想像していなかった「目からうろこ」の体験をしたからだ。 昨年10月のフォーラムで、COP5釧路会議以来の15年をふりかえり、小林聡史さんからよく言われていた「何ができて、何ができなかったか?」を自問自答し、「ラムサール条約入門―ゆたかな山・川・里・海を未来に伝える」の中に、日本の湿地保全活動の歴史として書いてもいたのだが、自分がまったく気づいていなかった「できなかったこと」に気づかされたのだ。
“草の根NGOの存在とはたらきが、先住民とローカル・コミュニティー、女性のはたらきと同様に、湿地の保全とワイズ・ユースの真の担い手であることは言うまでもない、しかし、それらの声が生かされたことは少なく、活かせる仕組みもなかった。条約事務局は締約国政府間の会議を準備し、世話するもので、基本的に内政干渉しないし、NGOの声を聴く義務はない。ただ、条約発効の推進力となったIUCN、WWF、WI、BLIの4つの国際NGOとはパートナーシップ契約を結んでいて、それらの意見を聞いて会議の運営を進めることができる。 草の根NGOも、その資格を持つべきではないか? そうしなくて、COPにお願い、抗議、アピール、ロビイングを、いくらしていても埒が明かないと学んだ15年ではなかったか? それに気づいたら、そのための努力をすべきでは? 草の根NGOには充分その能力や人材があるし、その気になれば必ずできる。必要なお金は集めることもできる” そのあと、浅野さん、メリッサ、堀さん、よしのさん、李さん……と、韓日あわせて13の重要なプレゼンが続いた(特にJang Ji Youngさんの大運河構想批判に感動)が、私の心には、トニーの言ったことがこだましていた。 会議2日目、ラムサールCOP10プレNGO会議のプログラムとアジェンダ(議題)、準備手続きを決める会議で、議長が選ばれることになり、推されてトニーがその役を引き受けた。 トニーは副議長に李さんと堀さん、書記にマさんと伊藤よしのさんを指名し、議事録を柏木さんがチェックして英文でまとめるよう指示した。 そしてまず、「プレNGO会議の冒頭に、『草の根NGOの結集宣言』を採択し、プレNGO会議のまとめをCOP10で発表できるよう、あらかじめ事務局と調整する、国際調整委員会の設置に同意を求め、この場で委員を決めようと提案した。 この積極的な提案に、基本的に賛成だが5カ月でやれるかという不安の声も出たが、昼食をはさんでコアメンバーをマ、柏木、メリッサ、トニーとしてマさんから発信することになった。またメリッサは「プレNGO会議」をやめて、「世界湿地NGO会議」として、COPとあわせて3年ごとに開催し、NGO、地域社会の視点から、「ダム、再生、運河」など共通の話題に絞って呼びかけようと提案した。 アジェンダと、実施手順について議論があったが、最終的には議長裁断で、5月中旬予定のCOP10参加案内には遅れるが、5月末までに、アジェンダを決め、世界のNGOへ呼びかけ、ラムサール事務局への連絡と委員会メンバーの確定を行うことになった。 (一部で心配されていたように、その後の展開は予定通りには運んでいないようだ。しかし、時間はかかっても世界湿地NGO会議は実現してほしいし、“その発想は世界の常識”というトニーを信じて、生物多様性COP9ボン会議ではどうなのか、見に行くことにした)
それにしてもイ・インシク先生、マ・ヨンウンさん、ハン・ドンウクさん、ジュ・ヨンギさんらたくさんの若い人たちにお世話になり、ボランティアの通訳の方々にも助けられました。 ありがとうございました。 (JAWAN通信 No.91 2008年7月1日発行から転載) >> トップページ >> REPORT目次ページ |