呉地正行 日本雁を保護する会/ラムネット日本
今回の会議では水田が大きな注目を浴びていた。水田は稲を栽培する農地だが、湿地の植物である稲を栽培するために、水田には水が張られる。これをラムサールの眼で見ると、水田は一時的に水がある人工湿地となる。水田は、農地と湿地の機能を併せ持つ「農業湿地」で、稲が数千年間もアジアで栽培され続けてきたことも、その「湿地」機能と関係が深い。ラムサールの関係者が水田に関心を示す最大の理由も、適切な水田農業は湿地の持続可能な利用の可能性を秘めているからだ。今回の会議では日韓政府が共同で、水田の生物多様性向上に注目した、水田決議案X.31(「湿地システムとしての水田の生物多様性の向上」)を提出し、本会議での審議を経て採択された。 ラムサールでは、これまでは農業の湿地への負荷面だけが強調されてきた。しかし2002年の第8回会議で、農業に関する決議VIII.34「農業、湿地及び水資源管理」が初めて採択され、その後は環境負荷を減らす農法を積極的に支援することにより、農地の生物多様性が高め、持続可能な農業湿地の利用を可能にするという考えが一つの流れになってきた。今回の水田決議は決議VIII.34を踏まえて、これを水田という農業湿地で具体化するものだ。環境に配慮した持続可能な水田農業を後押しする国際的な追い風も吹き始めた。今回の会議には、FAO(国連食料農業機関)が初めて参加し、水田の生物多様性を評価するサイドイベントを開催し、これ以外にも水田に関わるイベントも数多く見られ、会議全体の水田に対する関心を高めていた。とりわけ、私たちが関わった、日韓の環境、農業NGOや生協、企業など100団体以上が加盟した日韓ラムネット主催の、水田決議を支援するサイドイベント「世界の水田〜その生物多様性と持続可能性」には、他に比べ圧倒的に多い200名余りの人々が、アジア、アフリカ、欧米などからバランスよく参加し、水田決議への関心の高さと国際性を現場で強く実感した。
この水田決議採択は、以下の点でラムサール史上画期的な出来事といえる。
今後はこの決議を活かした行動が求められるが、日本の農業・環境行政に対しては、
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