トップ ページに 戻る

生物多様性条約COP10「わずかでも前へ」

細田邦子 (日本湿地ネットワーク監事)

 10 月20 日午前中、「生物多様性と気候変動」、「里山イニシアチブ」をテーマとした第1作業部会を傍聴し、午後、ブースで、来場者の応対をしてきました。
 私が傍聴した作業部会では、最初に「里山イニシアチブ」をテーマとした討議がなされ、それで大半の時間を費やしてしまい、「生物多様性と気候変動」については、別途時間をやりくりすることになりました。10時から13時まで3時間内で、用意された討議用文書について、約30カ国とオブザーバー組織が2分間という制限時間の中で主張を述べていくので、どうしてもタイムオーバーになるのでしょう。各国代表は「里山イニシアチブ」についておおむね賛意を表しており、これならすんなりまとまりそうだと思ったのですが、付帯条項や細部の文言について十人十色の主張があり、仮にテーマが「遺伝資源へのアクセスと利益配分」というようなものであると、合意を得ることは本当に難しそうです。
 また、先住民コミュ二ティーの代表が、「自分達がやってきた狩猟や採集は密漁とは違う。その点は、先住民と協議をするとか、手続きをしてほしい、先住民を加えた追加会議を求める」と発言していました。確かに、彼らは伝統的な生活手段として狩猟採集をしてきたのであり、自然と一体になって生きてきた人たちです。
 例えば、ワシントン条約で取引を禁止されているような動物を密漁してカネを稼ぐ、その結果、その動物を絶滅に追い込んでしまう、そういった人びとと一括りにされたくないという彼らの主張には説得力があります。彼らこそ、このような会議でもっとも尊敬されるべきと考えますが、実際は非常にマイナーな存在に見えました。
 この会議で日本は議長国となりましたが、上関をはじめ日本各地の自然破壊事業に、ただちに福音がもたらされるような様子はありません。開発主体の行政、企業はいかにして、自分たちにかけられた投網をかいくぐるかに汲汲としているようです。
 しかし、少なくとも「生物多様性」という言葉、その大まかな意味が、世間一般にも浸透するツールにはなったと思います。「自然を征服する対象」として捉えるのではなく、「人間も生物多様性の中での<種>にすぎない」という認識が、少しは広まっていくのではないでしょうか。
 ブースでの展示では、生物多様性条約市民ネットワークの中の1団体として比較的大きなテントの中にコーナーを設け、JAWANや各地の保全団体がパネルや写真で紹介しました。このテントでは、各各の団体が間伐材でできたパーツを使って、ついたて、間仕切り、机、小さな棚などを組み立て、そこにパネルや写真など取り付けたり、チラシ、パンフレットなどを置いたりしていました。狭い空間をうまく利用でき、視覚的にも感じが良いので、今後このような展示方法を活用できるといいのですが。
 来場者は思いの他多く、間断なく応対に追われました。こちらから声をかけると熱心に説明を聞いてくれて、狭いながらも充実したブース展示になっていると思いました。

(JAWAN通信 No.98 2010年12月10日発行から転載)

>> トップページ >> REPORT目次ページ