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原発予定地上関「田ノ浦」の危機

〜中国電力の大規模な強行工事〜

岡本 直也 (祝島虹のカヤック隊参加)

 山口県上関町にある、上関原発建設予定地「田ノ浦」では、原子炉設置許可も下りてなく、さらには地質調査さえ終わってないまま、中国電力による森林の伐採が行われ、海上の埋立工事を進めようとしている。
 田ノ浦周辺は、絶滅危惧種のハヤブサやナメクジウオ、国の天然記念物のカンムリウミスズメ、希少なスギモクの群集などが生息している生物多様性のホットスポットだ。
 田ノ浦から4㎞のところに浮かぶ祝島の人たちは10億円以上の漁業補償金を受け取らず、30年近く反対の意思を、身体を張って示し続けてきた。
 祝島の人口は、500人弱で平均年齢は70歳を超えている。70歳、80歳になる島の人たちがきれいな海や生活を守るため30年間も反対運動を続けている。

○深夜の強行工事

 2月21日の真夜中(午前2時)に中国電力は、田ノ浦の浜に立ち入らせないフェンスを設置しようと中電社員、警備員、作業員など約400人を動員したのだ。海が透き通って海草が育ち、祝島ではひじき取りなどが始まっていた時季である。
 田ノ浦の浜に泊まり込んでいた上関原発計画に反対のため全国から集まった人たち20数名はこの強行な工事に座り込んで抗議をした。
 また中国電力が作業を始めたと連絡を受けた祝島からも、抗議行動に船に乗って田ノ浦へ向った。
 海上のほうでは、埋立工事に使う土砂を落とす作業船や、砂や石を掘りだして海底を深くするための浚渫船など20隻以上が動員された。
 祝島の人たちは、自分たちの船を出して、祝島の船の数十倍大きい作業船に抗議に行ったが、海上保安庁のボートが祝島の船1隻に対し、3,4隻で行く手を阻み、「危険ですから離れて下さい」と船を横から突いて作業船から遠ざけた。
 さらには、「危険物を積んでないか調べる」と言い無理やり乗船してきた。その間に作業船は大量の土砂を落とし、青い海は土砂で白く濁っていった。

強行作業が行われている田ノ浦
強行作業が行われている田ノ浦

○緊迫する今の田ノ浦

 大規模な強行作業は連日続いたが、祝島や全国から集まった人たちの抗議で400人も動員された浜ではフェンスの設置の一部をいくつか立てただけにとどまっている。
 海上では作業船に大量の土砂を原発の排水口側にあたるところに落とされたが、他の浚渫などの直接的な埋立工事は祝島の人たちの抗議で食い止めた。海も浜もいつまた工事が動き出すか分からない状況が続いている。
 現場の状況はブログ、音楽、映像、イベントなどで情報発信をしている。最近はUstream を使い、抗議行動の現場をインターネットで生中継している。

○抗議の若者ハンガーストライキ

 2011年1月21日、僕たちは同世代の19歳,20歳の仲間5人で、山口県知事に「上関原発の埋立工事一時中断と埋立免許の再検討」を求めて、10日間、何も食べずに水と塩だけで過ごして山口県庁の敷地内で座り込みを実行した。
 二井関成知事は、この上関原発計画を推進する中国電力に対し公有水面埋立免許を交付したという。
 ハンストのメンバーは東京、千葉、埼玉、大阪と出身は別々で、各自が活動している間に知り合った仲間だ。県知事に、埋立工事の中断を決断して欲しいという想いと、関心を持って欲しいという意味で全国の人に向けて、僕たち5人は本気で想いを訴えるためにハンストという手段を選んだ。

強行作業に抗議する全国の人たちが手をつないでいる。

○ハンストへの想いと期待

 僕は、若い世代である自分ら5人がハンストをすることで、同じ世代の人たちに上関原発の問題に関心を持って欲しいという想いがあった。
 祝島の人たちは、故郷を守るため、自分たちの暮らしを守るために約30 年も原発に反対し、海を守るために人生を懸けてきた。そして、これから続いていく世代に、命の糧となる綺麗で自然豊かな海を受け渡すため、裁判で訴えられても、仕事を休んでも、体力を削って、命、人生を懸けて闘っている。
 そのことを、若い世代に気づいて欲しいと思っていた。決して祝島や上関町だけの問題ではなく、自分たちの問題でもあるということ。
 ハンストをした結果、県は要望に少しも応えてくれなかったが、ハンスト当日に立ち上げた僕たち5人のブログは10日間の間に、1日の閲覧数が15000人にも増えていった。
 全国からも1000通以上の僕たち宛に応援メッセージが届き、ハンストをしていた現場にも多くの方が訪れてくれた。多くの人に原発問題に関心を持つきっかけになれば嬉しく思う。(2010 年3 月9 日)

(JAWAN通信 No.99 2011年3月31日発行から転載)

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