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中池見湿地のラムサール条約
登録への道のりと現況

笹木 智恵子 (NPO法人ウエットランド中池見 理事長)

 今年は久々の豪雪になり、敦賀は一時陸の孤島になりました。テレビで全国放送となれば雪の怖さのみが強調され、人も近づけないような報道がされていました。
 雪もほとんど降らない、東京のような太平洋側の乾燥した所のみが、日本だと考えている都市中心主義の表れで、日本には多様な自然環境があり、多様な生活様式があるということを忘れてしまっています。
 日本は人口が都市に集中し続ける体制を取っているために、都市型生活優先で山間・僻地等、地方の雪国に住む人間はたまりません。積雪地対応でない管理と無防備な自動車の一台により道路は止まってしまうのです。
 昔から比べ降雪も少なくなくなりましたが、積雪地に住む人々は古代から雪と戦い、雪を利用し、雪に助けられ生活してきました。中池見もこの雪を利用して、深くなり酸性化する田んぼへ客土をして耕作してきました。
 降りしきる雪は墨絵のように広がり、久々の晴天の日は一面キラキラ輝く銀世界になります。2メートル近い雪は容易に人も近づけません。この雪の日だからこそ活動する生き物も、見える自然も多々あります。人間が考えるより湿地の自然はたくましいかぎりです。

雪の中池見湿地

 さて、大阪ガス(株)のLNG基地建設の計画が中止(2002)になり、その後の中池見の在り方が議論になってきました。大阪ガスは、買収した土地と施設全てを敦賀市に寄付(2005)、現在は敦賀市の所有になっています。
 河P一治敦賀市長も中池見をラムサール条約の登録湿地にしたいと表明し、福井県へ敦賀市の重要要望事項として「ラムサール登録を視野にいれた中池見保全協力について」を提出(2007)。まず、国定公園に編入することが必要です。国立公園協会が調査に入り、昨年秋(2010)に敦賀市による樫曲等、国定公園の範囲に入る地元への説明会がありました。どの地区も異論はなかったようです。
 全国からの一般・産業廃棄物が持ち込まれた地域ですから「ゴミが持ち込まれず自然環境が保たれるなら問題はない」との考えです。2月に福井県と環境省国立公園課の現地調査がありました。
 冬は天気が悪く、屋外の作業もできないのでゆっくりと資料の整理でもと計画していたのですが、世界湿地の日のイベントを市内量販店「ポー・トン」の協力で1月27日から2月7日まで開催しました。また、来年も開催して下さいととても好意的でした。

世界湿地の日2011

 1月30日、敦賀市が中池見の管理を委託している、NPO中池見ねつと主催の「中池見フォ−ラム2011」が東郷公民館で 開催。環境省のラムサール条約湿地候補地検討会委員でもある近畿大学の細谷和海教授の記念講演があり、京大、近大の大学院生の研究報告も湿地の不思議を紐解くようでした。
 外は雪が降り続き、数時間で車も雪だるま状態になった日でした。翌日は全ての交通機関はストツプしてしまいました。危機一髪の日でした。
 当会は2月26日・27日に敦賀市で里地分野を統括する( 財) 日本自然保護協会と共催で「モニタリングサイト1000里地調査発表会&サイト間交流会」を開催しました。26日には私たちの調査地・中池見湿地の現地見学会。6人の里地調査検討委員とともに各地のサイトからの参加者が天候に恵まれ、春間近な中池見を散策、見学しました。
 27日午前中に発表会が行われ、環境省生物多様性センターや日本自然保護協会からモニタリングサイト1000調査事業についてのお話しののち、中池見での調査発表。概要報告と鳥類、チョウ類、カヤネズミ、哺乳類調査と項目別に発表がありました。
 市民にも広く知っていただき、参加いただけたらと一般公開で行われました。午後は、全国からこられた調査員が調査分野ごとに分かれ、調査検討委員を囲んで意見、情報交換などが行われました。
 同じ日程で、敦賀市の環境フェアが開催されたため、中池見でのモニ1000調査の様子を出展、展示しました。

モニタリング1000 現地見学会
(JAWAN通信 No.99 2011年3月31日発行から転載)

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