いきもの不思議の国・中池見湿地
〜ラムサール条約登録へ一歩前進〜
中池見湿地はJR敦賀駅から約2kmと街に近く、小高い山に囲まれた湿地です。
湿地の西側に位置する天筒山、金ヶ崎城の天然の掘として攻防。古代から中世戦国時代の遺稿も多く、新田開発(江戸)の歴史遺産としても現存しています。
一見、草ぼうぼう、人間にとっては「こんなとこ」ですが、ヨシ原を抜ける風の音、野鳥のさえずり、虫の声、カエルの合唱、蛍の乱舞、草原を飛び跳ねる虫たち。湿地は賑わいに満ちています。春は黄色のサワオグルマ、セイタカタンポポ、白いミツガシワの花、カキツバタと四季折々の姿で迎えてくれます。そして、3000種もの生き物のいのちを育んでいます。
開発計画から国定公園編入へ
開発計画から国定公園編入へ
1992年、敦賀市の工業団地計画から突如として、大阪ガス((株)のLNG基地建設の発表がありました。中池見の自然を次の世代まで継ぎたいと、保護活動を開始。トラスト運動を展開し、2002年、JAWANはじめ全国の団体の協力と企業の経済判断で開発計画は中止になりました。2005年大阪ガス(株)が買収した土地、施設全てを敦賀市へ寄付、現在一部の農地とトラスト地以外敦賀市の公有財産となっています。かねてから私たちは湿地を守るための最低条件として、ラムサール条約登録湿地を目指して活動してきました。日本の重要湿地500に選ばれましたが、登録するためには、自治体の同意、面積、環境省の管理する「国立公園」「国定公園」等の条件が必要です。中池見は最後の条件「国定公園」に編入するために準備してきました。2011年12月22日の中央環境審議会で越前加賀国定公園へ敦賀市東浦海岸など約2000haの編入が答申され、中池見も含まれました。これで登録に向けての条件は整いました。
中池見の保全・管理
中池見は袋状埋積谷という地形に泥炭が堆積しています。湿地の深さは約80m、すり鉢状の地形に40mの泥炭が堆積しています。その年代は約13万年分ともいわれています。湿地面は海抜45mですから中池見の底は敦賀湾より深いのです。しかし、国際的には泥炭の研究者の関心は高いのですが、国内ではまつたく評価されません。中池見の登録基準は水田系の植物になっています。敦賀市には専門の研究者がいないために敦賀市が管理するNPO法人に研究者を募集させ、その研究者に管理させるようです。
今後の課題
中池見がラムサール条約に登録されたとしても開発問題が多々あります。国道8号バイパス沈下個所の改修や4車線化の計画。供用開始当初から路面沈下を起こしている湿地西側を通るバイパス。中池見の埋積谷という特異な地形を軽視しての敷設から、毎年2、3度はアスファルトの積み増し工事を行わなければならない沈下個所の抜本改修策として浮上したのがエポコラム工法です。基盤までドリルで穴をあけてセメントなど固形剤を流し込み、支持柱を400本近く立て、その上に路面を形成するという工法です。これについては、セメントや凝固剤などの土中での拡散挙動が不明なため、貴重な泥炭層破壊につながる恐れがあると私たちが指摘、敦賀市議会も要望書を採択して、工事は中止していますが、4車線化計画と共に、いつ再開されるか要注意です。また、北陸新幹線の敦賀までの延伸にゴーサイが出ましたが、中池見が予定ルートに入っており、大阪ガス(株)の時点では中池見を回避していたのですが、敦賀市の公有財産になったとたんに中池見の後谷にルート変更など、中池見をとりまく工事計画には課題が山積しています。
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