「中池見湿地ラムサール条約湿地登録記念式典」に参加して
2012 年8 月4 日、土曜日、敦賀市主催の「中池見湿地ラムサール条約湿地登録記念式典」があり、河瀬一治市長からの招待状を受けて、伊藤事務局長とともに参加しました。
中池見湿地は約87ha、三つの山に囲まれた低層湿原(山すそと水田など約25ha の湿地)で、「袋状埋積谷」という独特の地形です。湿原中央部には地下約40m におよぶ泥炭層が堆積しており、この泥炭から過去10万年の気候変動、植生変化を分析することができるそうです。
中池見の水環境は多様で、複雑な地形であることから豊かな生態系を形成しています。
トンボ類はキイロサナエなど70 種類以上が確認されており、植物も多様で絶滅危惧種のミズニラ、デンジソウ、オオアカウキクサなども生育しています。
このような貴重な環境である中池見湿地もすんなりと保全されてきたわけではないのです。市民のたいへんな努力がありました。大阪ガスのLNG 基地計画が進められ、深刻な危機に直面しましたが、地元の自然保護団体・ウェットランド中池見などの粘り強い活動により大阪ガスは基地計画を断念し、中池見湿地は敦賀市に寄贈されました。
20 年以上に亘る活動はたいへんなご苦労がありましたが、それが実り、ラムサール条約湿地に登録され、心から「おめでとう」を言います。
記念講演は「生物多様性パッチワーク、中池見湿地」で、河野昭一京都大学名誉教授『中池見湿地の自然−その限りない魅力の秘密を探る−』、角野康郎神戸大学院教授 『ラムサール条約と中池見湿地』、坂巻幸雄日本科学者会議災害問題研究委員会委員『地質学から見た中池見湿地の生い立ちと特徴』で、いかに中池見湿地が特異な地形で生物多様性に富み、貴重で魅力的なところかを感じました。
講師たちのパネルディスカッションもあり、外来種の駆除や、観察者増による影響などの問題が提起されました。私は熱心な討議に、それぞれの専門家である講師たちや、市民団体との連携により中池見湿地は護られ、この日を迎えられたのだと実感しました。
心配なのは数百メートル東の山に北陸新幹線のトンネルの建設計画が浮上したことです。トンネル掘削が地下水にどんな悪影響をもたらすかわかりません。ルートが変更になることを願っています。
中池見湿地はラムサール条約湿地に登録されましたが、ゴールしたのではありません。
新たな保全へのスタート台に立ったのです。
これからも長い道のりを、全国の仲間と一緒に苦難に負けないで立ち向かって行きましょう。
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