ラムサール条約湿地「中池見湿地」内に
新幹線建設ルートを認可
「中池見湿地」は、今年7月、ルーマニアで開かれた湿地の保護国際条約、ラムサール条約第11回締約国会議において国際的に重要な湿地として新規に登録された。
「中池見湿地」は、福井県敦賀市にある四方を山に囲まれた盆地状の田んぼの跡。江戸時代に新田開発されて以来、全域で耕作が行われてきたが、減反政策から休耕地が増え、25ヘクタールのうち5分の1程度しか田んぼとして利用されないようになっていた。敦賀市は1990年、この地に工業団地を計画したが、すり鉢状の超軟弱地盤ということから頓挫、そこへ大阪ガス(株)液化天然ガス(LNG)備蓄基地計画が浮上し、1992年に誘致をした。
しかし、環境アセスメント調査や地元NGO、研究者などの調査から世界屈指の厚さを持つ泥炭層(約40m、13万年分)の存在と生物の多様性が明らかになり、保存し、ラムサール条約への登録を求める声が大きくなってきた。その間に電力、ガスの自由化、バブルの崩壊など社会的要因も重なり、2002年に計画は中止、撤退となった。
大阪ガス(株)は、撤退にあたり事業者は買収した計画地、造成施設を敦賀市に寄付。これを受けて敦賀市長は保存を表明、ラムサール条約登録を目指すこととなり、福井県にも財政的、技術的支援を要請した。福井県も登録への国内要件の一つ、法的担保として越前加賀海岸国定公園への編入を申請、中央環境審議会において認められ、環境省は要件を満たした重要な湿地として、ラムサール条約事務局へ申請し、登録認定された。
この登録認定と時を同じくしてラムサール条約湿地の集水域内に北陸新幹線(金沢−敦賀間)のルートが認可されたことで、湿地の命とも言える水環境への影響が危惧
されている。
地元関係者は、影響の少ないルート変更など再検討を要請しているが、「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」側は、「トンネルであるから影響はない、事前調査を行うが、結果によってのルート変更はない」と明言しているため、ラムサール条約事務局や地元関係者は困惑し、鉄道・運輸機構の認識を注視している現況にある。
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