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講演会「日本の湿地を守ろう」に
参加して

細田邦子 (三番瀬を守る署名ネットワーク)

 4 月6 日(土)、福岡市「和白地域交流センター」で日本湿地ネットワーク主催の講演会「日本の湿地を守ろう」が開かれました。
 講演会には50 人以上の参加者があり、当日は風雨が吹き付ける荒天にもかかわらず、盛会となりました。

「日本の湿地を守ろう」講演会場

 山内副代表のあいさつ、そして、山本さんの「和白干潟の現地報告」から始まりました。講演では、鹿児島大学の佐藤正典先生から、「干潟・湿地の重要性と生物多様性」というテーマでお話がありました。

 ≪干潟は高い生産性があり、また、干潟生態系は水中の栄養塩を「ただで」除去してくれる天然のフィルター(人工的な下水処理システムでは「高度処理」と呼ばれるコストの高い機能)として働く。
 また、私たちの先祖は、米を食べる前から干潟の魚介類を食べていた。縄文時代の貝塚からもそのことが窺える。干潟は内湾全体の漁業を支える場であり、子孫のために残すべき大切な食糧庫と言える。
 干潟のある内湾では、干潟生態系の食物連鎖によって、陸から流入する栄養分の多くが人間の漁業資源や鳥の食物に転換され、最終的に系外に運びだされる。
 干潟を失った内湾では、海底の浚しゅんせつ渫による窪地もできている。流入する栄養分が運び出されることなく、湾内の海底に沈殿し、海底が酸素不足となり、ますます生物が住みにくくなる。また、底生微小藻類や干潟上部を縁どる泥の世界と塩生植物も重要である。≫

 東京湾三番瀬は、昨年夏、赤潮や青潮が頻発し、漁業被害も甚大でした。東京湾の干潟の90%は消失し、また、港湾としての機能を維持するため、継続的に浚渫がおこなわれており、今後どうしたら保全できるのか、真の再生への道筋はあるのかなど、改めて考えさせられました。
 次に「ラムサール条約入門〜和白干潟を条約湿地に指定するとどうなるか〜」と題して、釧路公立大学の小林聡史先生の講演がありました。

 ≪ラムサール条約事務局から公式の条約湿地認定証をもらった後はどうなるのだろうか? 条約加盟国として条約湿地を指定するということは、我が国が世界に向けて、湿地の価値を認め、その保全とワイズユースの取り組みを促進していく約束をしたことになる。そのため、①国と自治体の取り組みが始まることになる。また、②市民との協働のあり方が問われることになる。さらに登録前から重要なことなのだが、一層の③普及啓発活動が必要となっていく。≫
 
 条約に登録されること自体、容易なことではありませんが、登録した後もその保全とワイズユースの取り組みを促進していかねばならず、登録したからそれで終わりということにはならないということです。
 その後、中池見湿地からの特別報告、各地の報告と意見交換があり、講演会は閉会しました。
 翌日は、和白干潟を守る会の方々に案内していただき、現地見学をしました。和白干潟は博多湾の東奥部にある約80ha の砂質干潟です。沿岸にはハママツナやハマニンニクなどの塩生植物が豊富で、絶滅が心配されるクロツラヘラサギやツクシガモの越冬地としても重要です。
 私は初めて訪れたのですが、アシ原が広がっている風景が印象的でした。アシ原の間から干潟や鳥を見るというのは、何とものどかで、こういう風景が干潟の原風景なのだろうと思いました。
 ただ、現在、前方に人工島があり、残念ながらこの人工島がなかった時の風景をもう見ることはできません。人工島には、帰路、無理をお願いして車で通過してもらいました。
 この美しい干潟を埋め立てて建設した人工島の風景はどこにでもある、ありふれた都市の風景で、味気ないものでした。
 余計な話ではありますが、東京湾三番瀬に面して、浦安という半分埋立地の市街地がありますが、2011 年の震災で埋め立て地は液状化し、街はデコボコになりました。現在でも復旧していません。この人工島も巨大地震に襲われれば、同じ運命になるだろうと危惧しています。
 この人工島建設の目的に一部には、浚渫土砂の廃棄ということがあるようです。ここだけではないのですが、港湾施設があれば浚渫は不可欠ですし、その浚渫土砂の持っていき場所として干潟が狙われるという事例をよく聞きます。このような理由で美しい干潟が消失していくのをなんとかしてくい止めたいものです。
 当日、天候が悪く、期待していたクロツラヘラサギを見ることはできませんでしたが、佐藤先生が干潟を掘って、チロリ、コケゴカイなどの底生生物を取出し、同定の仕方の説明をして下さいました。また、アシナガゴカイという外来種が広がっているとのこと、三番瀬では見ていないのですが、全国的にはどうなのでしょうか。
 現地見学のあと、山本さんの切り絵館でお茶をごちそうになりながら、作品の数々を見せていただきました。山本さんは美大を卒業されていらっしゃるそうで、作品の完成度が高い理由に納得がいきました。

きりえ館でお茶を飲みながら勉強

 最後になりましたが、和白干潟を守る会の方々には大変お世話になりました。お礼申し上げます。

(JAWAN通信 No.105号 2013年6月21日発行から転載)

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