日本の湿地を守ろう 2014
〜JAWANが広島でシンポジウム〜
日本湿地ネットワーク(JAWAN)は3月16日、「日本の湿地を守ろう2014」と題したシンポジウムを広島市内のサテライトキャンパスで開きました。
最初は、日本のツキノワグマ研究所理事長の米田一彦(まいた・かずひこ)さんによる講演「水たまりに寝そべるクマ」です。動物と気圧の関係やクマの習性などについて話をされました。
クマは冷温帯を好む動物です。米田さんは、クマが水溜りに腹をつけて寝転んだり、水辺でくつろいだりしている様子を写真で説明しました。クマが人間に危害を加えるとすぐ殺してしまう風潮があります。でも、殺さないで生かして森に帰すことも必要です。すべての生きものの生きる権利を守りたいものです。
次いで日本野鳥の会広島県支部の日比野政彦さんが「広島湾八幡川河口干潟と鳥類」と題して講演しました。広島湾西部にある八幡川河口部は小規模な干潟です。その沿岸部には多数の人が住んでいます。1980年代、広島港五日市地区港湾整備事業の一環として人工干潟が造成されました。造成後、まもなくシギ・チドリがやってきたので、人工干潟の成功例として全国に宣伝されました。ところが、盛土した底土は浚渫土や廃棄物だったので地盤沈下しました。いまはシギ・チドリが来なくなったそうです。人工的に疑似自然を形成するさいは失敗から学ぶべき、と日比野さんは話しました。
続いては、ハチの干潟調査隊代表の岡田和樹さんが「受け継ぎゆく干潟〜ハチの干潟のとりくみ〜」と題して講演しました。ハチの干潟は面積が22haほどです。汽水域、泥地、砂泥地、砂場、岩場、アマモ場と、さまざまな自然環境が凝縮されています。多様な環境がたくさんの種類の生きものを育む場となっています。そんな干潟に2005年の冬、「藻場造成計画」と称した埋め立て計画が持ち上がりました。岡田さんたちは、干潟を手付かずのまま未来に受け継ぎたいと、干潟の調査、観察会、写真展、埋め立て反対署名など、さまざまなとりくみを続けました。その結果、ハチの干潟を開発から守ることができました。若い岡田さんに、“未来をつなげてくれる人”と期待をこめた拍手が送られました。
講演のあとは各地の報告です。瀬戸内海のほか、三番瀬(千葉)、中池見湿地(福井)、吉野川河口干潟(徳島)、和白干潟(福岡)、泡瀬干潟(沖縄)の報告がありました。
JAWAN代表の辻淳夫さんもシンポに参加し、介護者の吉田さんが「地元の活動が未来につながるように」と代表の意思を代弁されました。
シンポの参加者は40人ほどです。問題を抱えながらもみな頑張っている様子が伺え、励まされた集会でした。
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