野鳥観察を通して都市環境の変化を読み取る!!
◎学生による野鳥観察会
私の所属する法政大学人間環境学部の高田雅之教授ゼミでは、ゼミ生が有志で「野鳥班」を結成し、昨年度から野鳥観察会を定期的に実施しています。ただ野鳥を観察するだけでなく、野鳥観察を通して、都市における自然環境の変化を読み取る能力を養うことを目的としています。
昨年度は、法政大学周辺を中心とした135地点で野鳥観察会を実施し、64種類の野鳥を発見することができました。今年度もゴールデンウィーク明けから活動を本格的に始めています。これからのシーズンは暑さと戦いながら野鳥観察会をすることになりそうです。今年度は観察エリアを徐々に拡大させ、100種類の野鳥を観察することを目指したいと考えています。
◎野鳥図鑑の作成、そして図鑑のIT化へ
野鳥班では、これまで観察してきた野鳥をゼミ生オリジナルの野鳥図鑑にまとめることにより、野鳥に対する理解を深めています。この野鳥図鑑の特徴は、野鳥に関する知識を並べるだけでなく、野鳥を観察した時のゼミ生の感想や、野鳥と生息環境との対応などを具体的に明記している点です。現時点で、図鑑に掲載している野鳥は約50種です。今後もさらに掲載数を増やすことにしています。また、スマートフォンやタブレット端末からも野鳥図鑑のデータを見られるようにすることにより、観察した野鳥の種類をいつでも手軽に確認できるような工夫もしています。
◎“Hosei-IBA”の選定
IBAは「Important Bird Area」の略称です。日本語に直すと「野鳥を指標とした重要生息環境」となります。Hosei-IBAとは、野鳥班が生み出した造語であり、「法政大学周辺(東京都千代田区全域)における、野鳥にとっての重要生息環境」という意味です。
野鳥班独自の指標を作成し、その指標と野鳥観察会のデータを照らし合わせながら、主に水辺環境を中心にHosei-IBAを選定しています。都市部の他の区と比べ、千代田区には野生動物にとって重要な水辺環境が比較的多く残されています。皇居を囲む内濠や外濠、北の丸公園、日比谷公園などです。野鳥を指標としながら、こうした貴重な都市の水辺環境を守ることの大切さを示していくことを、Hosei-IBAの選定の目的としています。現時点では、カワセミを頻繁(ひんぱん)に観察した市ヶ谷濠(外濠のひとつ)や、千代田区内屈指の水鳥の種数を誇る中の池(北の丸公園)、千鳥ヶ淵などをHosei-IBAに選定しました。
さらに今年度はHosei-IBAに選定した地点をパンフレットにまとめ、千代田区民や区内にある企業にHosei-IBAを紹介・発信していきたいと考えています。普段あまり自然に接する機会のない都市部の方々に、都市における水辺環境の存在の貴重さを認識してもらうと同時に、野生生物との共存について考えてもらうきっかけを提供できれば、と思っています。
◎さらなる取り組み
今年度は、野鳥の餌台の設置にも取り組んでいます。ペットボトルと小枝を材料とした餌台をゼミ生が作成し、それを大学付近の某所に設置しました。さらには自動撮影装置も取り付け、野鳥の餌台の利用状況のデータを定期的に取ることにしています。
また、野鳥観察会に加え、今後は一般の方々向けの探鳥会を月に一度のペースで開催し、ゼミ生自身のインタープリテーション能力(野鳥の特徴や生態などを説明できる能力)の向上にも努めていきたいと考えています。
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