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三番瀬のラムサール条約登録をめぐる動き


 三番瀬は、東京湾奥部に残る唯一の自然干潟・浅瀬である。三番瀬の新たな埋め立て計画は、反対運動の高まりにより2001年9月に白紙撤回となった。その後、三番瀬を恒久保全するためラムサール条約登録の気運が高まった。知事の諮問機関「三番瀬円卓会議」が2004年1月に知事に提出した提言には、三番瀬のラムサール登録推進も含まれている。後継組織の「三番瀬再生会議」も、早期のラムサール登録を求める意見書を知事に提出した。2008年には、三番瀬を漁場とする3漁協のうち最大規模の船橋市漁協が臨時総会でラムサール登録に賛成する決議をあげた。地元の船橋、市川、浦安3市で構成する京葉広域行政連絡協議会も2010年、三番瀬のラムサール登録推進を求める要望書を県知事に提出した。同協議会事務局の船橋市は「利害関係者の調整など、県にリーダーシップをとってもらいたい」と要請した。「三番瀬を守る署名ネットワーク」がとりくんだラムサール登録署名は14万集まった。ところが県は、市川市行徳・南行徳の2漁協が「登録は時期尚早」と主張していることを口実にし、三番瀬のラムサール条約登録を否定しつづけている。
 他方で、埋め立て推進勢力の巻き返しも強まった。2012年6月、船橋市漁協の総会が開かれ、ラムサール登録推進派の大野一敏組合長が退任となった。同漁協は同年12月の臨時総会においてラムサール登録賛成決議を撤回した。
 一部の環境団体も三番瀬のラムサール登録に反対する意見書を知事に提出した。「三番瀬フォーラムグループ」と「日本野鳥の会千葉県」である。両団体は三番瀬の人工改変(人工干潟造成)を主張している。
 こうした状況のなかで、市民団体(三番瀬保全団体)が漁協などすべての利害関係者からラムサール登録の同意を得るのは不可能に近い。環境省は、湿地保護の国際的責任を果たしてほしいと思う。

(中山敏則)

(JAWAN通信 No.107 2014年5月31日発行から転載)

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