トップ ページに 戻る

都市緑地のあり方を考える

法政大学人間環境学部 高田Aゼミ4年 押田 悠

■高田ゼミの新たな取り組み

 法政大学人間環境学部の高田雅之教授ゼミは開設されて3年目と新しく、毎年新たな取り組みに挑戦しています。昨年から活動している「野鳥班」に続き、今年度は都市の緑地のあり方を考える「都市緑地班」、ホタルの生息可能な環境を提案する「水辺班」、ほかにも生き物に関する文化を調査する「生き物文化班」、外来種など自然に関する研究を行う「自然研究班」の活動を始めました。いずれの班も、教授からヒントをもらいつつ、ゼミ生が主体となってプロジェクト学習を進めています。

自然研究班の活動風景
自然研究班の活動風景

■都市緑地班の活動

 今回は私が参加している都市緑地班の活動を紹介させていただきます。
 都市緑地班の活動は、一言でいえば「都市の緑地のあり方を考える」というものです。緑地を評価する眼を養い、最終的には私たちが考えた緑地を企業に提案することが目標です。
 最近はCSR(企業の社会的責任)という概念が世の中に浸透していて、屋上や壁面の緑化、緑地づくりに力を入れる企業が増えています。私たちはこうした企業に緑地を提案することを目指しています。
 これらの企業は目的を持って緑地をつくっており、その目的は業種や企業の立ち位置によってさまざまです。そして企業に緑地を提案する以上、私たちは企業が何のために緑地をつくるのかを知らなければなりません。また、その目的を達成するにはどのような緑地が望ましいのかを考えることも必要です。そのためには、どのような緑地が良い緑地といえるのかを学ぶ必要があります。春学期はまずこの「緑地を評価する眼」を養うところから始めました。

外濠公園での観察会
外濠公園での観察会

■緑地観察会の実施

 「緑地を評価する眼」を養うため、春学期の活動は公園での緑地観察を中心に行いました。企業がつくる緑地と同じように、公園もそれぞれ目的をもってつくられています。例えば、多様な生き物が住む公園、きれいな花が多い華やかな公園、遊具や水場があり子供が遊べる公園など、さまざまなものがあります。私たちが緑地を評価するとなると、「生物多様性」など一つの観点からに偏りがちです。しかし、企業は単に生物多様性の高い緑地を目指しているとは限りません。提案を目標にするのであれば、私たちは景観や利用のしやすさなど複数の観点を身につけ、緑地の目的を考慮したうえで評価すべきでしょう。公園にしても「生物多様性が高い公園」=「よい公園」だとは言い切れません。さまざまな観点から公園を見てみることが、「緑地を評価する眼」を養うことにつながるのだと私は考えます。
 また緑地観察にはシンプルに自然に親しむという目的もあります。プロジェクトを始めたばかりの私たちは、まずこちらに重点を置いて活動しています。先ほどの「緑地を評価する眼」をマクロな視点であるとするならば、こちらはミクロな視点だといえるでしょう。具体的には、教授や生き物に詳しいゼミ生に植物や虫についてレクチャーしてもらっています。当初はどの草木も同じように見えていた学生が、最近ではある程度の種を見分けることができるようになりました。教授たちの都合がつかない時は、見かけた植物を図鑑で探したり、持ち帰った葉っぱや写真を調べたりしています。葉っぱはラミネート加工して標本にしています。

ウバメガシ
ウバメガシ

■今後の活動

 春学期は三井住友海上さんの緑地を見学させていただきました。夏季休暇には森ビルさんと東急不動産さんに緑地を見せていただく予定です。いよいよ活動が本格的になってきたというところでしょうか。また、秋学期はこれまで観察した生き物を図鑑にまとめる予定です。自然に興味がない人でも気軽に読める、高田ゼミオリジナルの図鑑を目指したいと考えています。
 都市緑地班をはじめとした高田ゼミのプロジェクトは決して一年で完成するものではありません。現在4年の私が参加している間に成果が出せるとは限りませんが、この経験は社会に出てからもきっと役に立つはずです。夏の暑さに負けず、引き続き頑張っていきたいと思います。

(JAWAN通信 No.108 2014年8月31日発行から転載)

>> トップページ >> REPORT目次ページ