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ラムサール条約登録・中池見湿地の保護対策

NPO法人ウエットランド中池見 理事長 笹木智惠子

 政府が国土強靱化を唱えだして以来、敦賀も例外ではなく、これまで凍結されていた各種計画が動きだしています。すべて北陸新幹線・新北陸トンネルの掘削工事がはじまりです。

(中池見湿地関連の工事)

 福井県では、敦賀までの延伸予定をさらに3年の前倒しを求めています。また、田結(たい=中池見湿地の北部集落)の新産業団地建設計画と国道8号バイパスの未施工部(中池見地係の前後)の4車線化の動きが活発化しそうです。これが動き出すと、中池見湿地は、ラムサール条約登録エリアの東側、「後ろ谷」を分断する新幹線の線路とトンネル建設工事、西側に国道バイパスの拡張工事と、挟み撃ち状態になります。昨年、国道の改良工事がいい形(路面排水の湿地への垂れ流し構造の改修)で終わり安堵した矢先でした。湿地を取り囲む環境は危機を増すばかりです。
 湿地の水環境を守るために、「い・ろ・は・す“地元の水”応援プロジェクト2014」の支援で、地元地権者から使用を認められている田んぼで修復作業を行いました。長年の観察結果や助言を受けての作業です。水環境、生息環境が整い、ヘイケボタルが大量に発生。一斉発光に出会った時は思わず歓声をあげました。20年近く待ちわびたホタルの光です。
 一方、6月15日付『福井新聞』(共同通信社配信記事)は次のように報じています。2026年開業予定の北陸新幹線計画が波紋を広げている。開発優先か、湿地の保護か。スイスの条約事務局も生態系への影響を注視している。今年3月、モントルーレコード(生態学的特徴が変化する可能性がある湿地)として締約国に状況報告を求めるリストに中池見を載せた。環境省によると、国内46か所の登録地では初めての「不名誉な事態」だ。
 また、新幹線機構の検討委員会2回目の会合(7月13日)では、「予定地の水源と湿原とは別」と、中池見への認識不足の発言がありました。湿地の地下補給流路を心配しているのですが、まったく視点が異なる調査が行われているようです。議事録の公開が待たれます。
 私たちは湿地を守るためにトラスト運動「中池見湿地トラスト」で土地(山林)712㎡を取得しています。しかし、6月に国会で「地域自然資産区域法」が可決。自治体がトラスト活動として土地を取得し、入域料を徴収し管理、保全経費に充てる内容です。この法律を元としてか、敦賀市の「中池見湿地保全活用計画策定委員会」の意見に、中池見湿地トラスト地を敦賀市へ寄付せよとの文言がありました。ナショナルトラストの主旨を理解しない内容です。トラスト運動でも全国に先駆けトラストつぶしがはじまりました。

(JAWAN通信 No.108 2014年8月31日発行から転載)

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