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罰金は払う。開門はしない。

〜悪代官・農水大臣と長崎県知事〜

諫早湾しおまねきの会 大島弘三

1.経過

 2010年12月6日、福岡高裁は有明海漁民の訴えを認め、諫早湾の排水門を「3年間の猶予のあと、5年間開門せよ」と判決した。被告の国は控訴せず、判決が確定した。
 これを受けて、干拓地を管理する長崎県農業振興公社や干拓地の営農者は長崎地裁に「開門差し止め」を提訴した。地裁は2013年11月、「開門してはならない」との仮処分を命じた。
 福岡高裁は、確定判決(開門)を履行しない国に対し、開門するまで毎日49万円の罰金を支払えと命令した。

2.「二つの判決に挟まれた」フリをする農水大臣

 農水大臣は「相反する二つの判決に挟まれて、身動きがとれない」と、自らの不作為を棚に上げて被害者気分である。さらに「地元の反対で工事もできない」と、干拓工事の責任を放棄し当事者能力なしである。
 長崎地裁の判決文には開門できない理由が述べられている。
 ①国は開門のための対策工事をする気がない。
 ②国は有明海の漁業被害を立証しなかった。
 だから、開門すると営農者の被害が発生し、開門する必要性が認められない。つまり、農水省は「長崎県が反対して工事ができなかった」との理由で逃げている。さらに、長崎地裁の裁判の中で、被告の農水省は有明海の漁業被害を訴えなかった。結局、原告である干拓地農民の「このまま開門したら畑に被害が出る」という言い分が通ってしまった。
 老朽化した昔の堤防をそのままにして代替の農業用水の手立てもせず開門すれば、被害が出るのは当たり前である。それは農水省が長崎地裁の裁判に勝つための筋書きであった。
 この間、農水省は徹底して長崎県知事をピエロに仕立て、開門反対を演出している。一方、「県知事のプロパガンダ」の役割は、県政だより、干拓地、潮受け堤防の掲示板、県のホームページなどの媒体を使い、「開門すれば大変」という宣伝を県民に浸透させることである。そして、私たち市民をはじめとする関係者との対話を一切拒否することである。

写真
「対話がすべてを解決する」と、リレートークで訴えています

3.市民活動の展開

 裁判に勝てばすべてが解決する訳でもない。とくに今の安倍政権は、権力を握った者の言うとおりにしろ、というスタンスである。地方の権力者までがこれをマネしている。
 干潟の回復、諫早湾と有明海の再生が究極のゴールであることに間違いない。青い地球を薄汚いドブ色にしたのは誰か。それを将来問われても、答える者はこの世にいない。
 私たちは「農漁共存」がスローガンである。関係者すべてが一堂に会する、公開された対話の場による解決を求めている。

(JAWAN通信 No.108 2014年8月31日発行から転載)

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