トップ ページに 戻る

「瀬戸内法改正案」(自公案)の修正を求める

〜環瀬戸内海会議〜


◇自民・公明両党による改正案の問題点

 自民・公明両党は先の通常国会に「瀬戸内海環境保全特別法改正案」を提出しました。この改正案は大いに問題ありです。主な問題点は3つです。
① 現行法にある「富栄養化による被害発生の防止」の条項を削除するとしている。
② 現行法第1条に記載されている「自然海浜の保全等」を「自然海浜の保全、環境保全のための事業の推進等」に改めるとしている。
③ 瀬戸内海の環境悪化を防ぐためには埋め立て禁止が必要なのに、それを無視している。
 ようするに、一方で埋め立てを認め、他方で再生事業などを進めるというものです。

◇改正案の修正を求める

 そこで、環瀬戸内海会議は自公案の修正を求めて国会ロビー活動を続けています。環瀬戸内海会議が求めている修正点は3つです。
① 「富栄養化による被害の発生の防止」の条項は削除せず、富栄養化が赤潮と貧酸素海域を発生させてきたことに鑑(かんが)み、赤潮と貧酸素海域の対策を盛り込む。
② 改正案では「自然海浜の保全、環境保全のための事業の促進等」に改めるとしているが、「事業案」の内容が具体性に欠け、環境破壊につながりかねないので改正しない。
③ 現行法第13条では、公有水面埋め立ての承認について「瀬戸内海の特殊性につき十分配慮しなければならない」とある。これを「特別な必要がない限り原則として禁止とする」に改める。
  一部の漁協や漁連は改正案の早期成立を求め、こんなことを陳情しているそうです。
 「瀬戸内海はきれいになりすぎたのでノリの色落ちがひどい。富栄養化は解決した。いま問題になっているのは“貧栄養化”だ。流入河川に堆肥(肥料)をまくなどの対策を講じてほしい」
 環瀬戸内海会議は議員にこんな話をしています。
 「“貧栄養化”は瀬戸内海のごく一部で起きている局地的・特殊的現象である。全体的には富栄養化が問題となっている。富栄養化を原因とする赤潮はいまも年間100件くらい発生している。青潮も深刻な被害をひきおこしている。青潮は、富栄養化の著しい海域において底層の貧酸素水塊が表層に上昇するため貧酸素海域になってしまうという現象である。富栄養化を原因とする赤潮や貧酸素海域の慢性的発生は、瀬戸内海の豊穣の海を損なっている。とりわけ、富栄養化の結果としての貧酸素化対策は不可欠である」
 これまで約20人の議員に要請しました。福山守衆院議員(自民、徳島、環境大臣政務官、衆院環境委員会委員)、水岡俊一参院議員(民主、兵庫、参院環境委員会理事)、近藤昭一衆院議員(民主、衆院環境委員会理事)、吉田泉衆院議員(民主、衆院環境委員会委員)、玉木雄一郎衆院議員(民主、香川)、江田五月参院議員(民主、岡山)、菅直人衆院議員(民主、宇部市出身)、清水貴之参院議員(維新、参院環境委員会委員)、田沼隆志衆院議員(次世代、衆院環境委員会委員)、桜内文城衆院議員(次世代、愛媛)、市田忠義参院議員(共産、参院環境委員会理事)、仁比聡平参院議員(共産、福岡)、吉田忠智参院議員(社民、大分)、亀井静香衆院議員(無所属、広島)などです。何人かの議員が両院の環境委員会で修正意見を出してくれることになりました。

江田五月議員に要請
江田五月参院議員(左)に要請する環瀬戸内海会議のメンバー=9月19日

◇環境省と話し合い

 改正案について、環境省大臣官房の早水輝好審議官(水・大気環境局担当)とも話し合いました。閉鎖性海域対策室の根木桂三室長なども同席です。
 審議官は「瀬戸内法改正案は議員立法なので行政府はタッチできない」としながら、「富栄養化による被害発生防止」条項の削除についてこう述べました。
 「瀬戸内法が制定されたあとで水質汚濁防止法を改正し、CODに加えて窒素・リンも総量規制するようになった。なので、『富栄養化による被害発生防止』条項を削減するという改正案は問題がない」
 これに対し、環瀬戸内海会議は次のように話しました。
 「水質汚濁防止法によって窒素・リンの総量規制がされているというのはわかる。しかし、瀬戸内海では富栄養化が相変わらず問題になっている。また、海域によって違いがあるが、赤潮や貧酸素海域も慢性的に発生している。瀬戸内法の制定時は貧酸素海域の問題は考慮されていなかった。その後、水質汚濁防止法にもとづいて窒素・リンの総量規制がされることになったが、うまくいっていない。瀬戸内法改正案(自公案)は、こうした赤潮や貧酸素海域をどうするかいうことについていっさいふれていない」
 「中央環境審議会による答申『瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生のあり方』や環境省が示した『瀬戸内海環境保全基本計画』変更案では、富栄養化と貧酸素水塊の問題や、その対策にもふれている。しかし、自公案はそれらについてまったくふれていない。そればかりか、現行法にある富栄養化被害発生防止の条項を削除するとしている。この条項を削除すれば、もう富栄養化対策は講じなくてもいいと読みとられてしまう。だから、私たちは削除に反対している」
 「改正案の早期成立を求めている一部漁協は、ノリの色落ちの原因として“貧栄養化”をあげている。しかし、ノリ色落ちの原因はいろいろある。たとえば神戸沖では、潮の流れが速いところでノリの色落ちが起きている。潮の流れが速いと栄養分が流れてしまう。香川県もおなじだ。逆に、有明海のように、富栄養化が進んでいる海でもノリの色落ちが起きている。したがって、ノリの色落ちと“貧栄養化”を結びつけ、瀬戸内海の富栄養化は解決したというのは短絡的だ」

環境省と話し合い
環境省の審議官など(左奥)と話し合い=10月10日
(文責・編集部)

〈追記〉「瀬戸内海環境保全特別法改正案」は廃案となりました。

(JAWAN通信 No.109 2014年11月30日発行から転載)

>> トップページ >> REPORT目次ページ