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■湿地保全団体の紹介

小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会

〜日本最大規模の自然干潟を後世に残すために〜


◇わが国最大規模の自然干潟

 盤洲(ばんず)干潟(小櫃川河口干潟)は、東京湾の小櫃川(おびつがわ)河口に広がる国内最大規模の砂質自然干潟である。
 盤洲干潟は前浜と後浜(あとはま。三角州)からなる。前浜に広がる干潟の面積は1400haにおよぶ。最干潮時は、水際が見えないほど遠くまで干潟が現れる。43haの後浜には塩性湿地が広がっている。感潮クリーク(塩水と淡水の影響を受けている水路)もある。多数多様なカニ類が生息しているほか、ハママツナ、シオクグといった塩湿地植物の大群落がみられる。
 盤洲干潟では絶滅危惧種のハマガニやエドハゼの生息も確認される。地球上でここだけにしかいないキイロホソゴミムシも生息している。このように盤洲干潟は生物相が非常に豊かで、自然の宝庫となっている。

◇連絡会の結成と保全運動

 戦後の1950年代後半から80年代にかけて、東京湾の干潟はかたっぱしから埋め立てられた。1936年に136km2あった干潟は、1990年では10km2に減少したとされている。10分の1以下に減った。現在は、まとまった干潟は盤洲干潟と三番瀬に残るのみとなった。
 千葉県は、その盤洲干潟と三番瀬も埋め立てる計画であった。だが1970年代になると、「干潟をこれ以上埋めるな」という運動が高まった。1972年、「千葉の干潟を守る会」や「房総の自然を守る会」(現千葉県自然保護連合)などのメンバーが「東京湾の埋め立て中止と干潟の保全」請願を第68回国会に提出し、これが採択された。翌1973年2月、千葉県が大規模埋め立て続行を断念したため、盤洲干潟は残ることになった。
 ところが1980年代になったら、「民活」(民間活力導入)のトップをきる巨大公共事業として東京湾横断道路(現東京湾アクアライン)計画が浮上した。盤洲干潟を横断するため、県内の自然保護団体などが反対運動を起こしたが、建設されてしまった。
 1999年には、盤洲干潟の隣接地に大浴場とホテルを建設する計画が浮上した。翌2000年には、干潟の隣接地に大型レジャーランド(遊戯施設「民話・童謡の里」)を建設する計画ももちあがった。
 その1、2年前の1998年、小櫃川の源流部に追原(おっぱら)ダムを建設するという計画を県が発表した。千葉県内随一の豊かな自然環境や渓谷美を誇る七里川(しちりがわ)渓谷をつぶすものであった。そこで、県内のさまざまな自然保護団体が「小櫃川源流域の自然を守り育む連絡会」(通称「七里川渓谷を守る会」)を結成し、ダム反対運動を繰り広げた。その結果、追原ダム計画は2001年1月に中止になった。
 追原ダム計画を中止させた自然保護団体は、次は小櫃川の河口部に広がる盤洲干潟を守ろうと、「小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会」を結成した。2001年6月のことである。連絡会には、小櫃川の水を守る会、千葉県自然保護連合、千葉の干潟を守る会など14団体が加わった。残念ながらホテル三日月が経営する大浴場とホテルは建設されたが、大型レジャーランド計画は中止させた。

小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会の小関公平代表(左)と御簾納照雄事務局長
地球上で盤洲干潟にしか生息しないキイロホソゴミムシ(御簾納照雄さん撮影)

◇自然環境保全区域指定をめざす

 それ以降、干潟や隣接地の開発計画はもちあがっていない。だが、いつ、どんな開発計画が浮上するかわからない。そこで連絡会は、盤洲干潟を千葉県自然環境保全条例にもとづく自然環境保全区域に指定するよう、県(自然保護課)に働きかけている。
 『千葉日報』も、2006年5月8日付けの社説で盤洲干潟は「自然の宝庫」とし、こう記している。「県はこれまでの漁業補償金で漁民を黙らせる“悪しき伝統”を断ち切り、双方の意見に耳を傾け、仲介することで、自然環境保護地域指定へ向けて一歩足を踏み出すべきだ」。
 だが、指定はなかなか進まない。最大の障害となっているのは地元の金田漁協である。同漁協は自然環境保全区域の指定に強く反対している。県の自然保護課が盤洲干潟の後浜を自然環境保全区域に指定しようとしたさいも反対した。漁協は反対の理由として、「指定されると鳥が増え、売り物のノリに羽毛が混入する」と言っている。これは口実である。本音は、保全区域に指定されると干潟や隣接地で開発ができなくなる。そうなると、カネ(漁業補償金など)をもらえなくなる、ということである。
 金田漁協は、東京湾アクアラインの建設に伴い莫大な額の漁業補償金をもらった。また、ホテル三日月がホテルと大浴場を建設するさい、同漁協が所有する埋め立て地(10万3500m2)を24億円でホテル三日月に売却した。この埋め立て地は、県企業庁が同漁協に6億円で払い下げたものだった。ホテルに売却するさい、売却費の一部(2億円)を組合長(当時)が着服した。それがあとで発覚し、組合長は有罪となった。ようするに、開発が規制されるとこうしたうまみがなくなるということである。
 連絡会は、日本最大規模の自然干潟を後世に残すため、盤洲干潟の自然環境保全区域指定をめざしている。また、より多くの人に盤洲干潟のすばらしさを知ってもらうため、観察会をつづけている。盤洲干潟は街中(まちなか)からかなり離れているため、なにをやられるかわからない。そのために監視もつづけている。

小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会 代表 小関公平)
前浜の干潟を観察するJAWANシンポジウムの参加者=2011年5月21日
後浜の中州で
(JAWAN通信 No.110 2015年2月28日発行から転載)

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