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博多湾・和白干潟の現状

和白干潟を守る会 山之内 芳晴

 和白干潟(80ha)は博多湾の東奥部、和白海域(300ha)にある砂質干潟で、日本海側では最大規模の干潟です。ここには砂浜、岩礁地帯からヨシ原、クロマツ林へと続く貴重な自然海岸が残っています。また東アジアの水鳥の渡りルートの交差点にあたる国際的に重要な場所で、水鳥たちの渡りの中継地、越冬地としても重要です。

1.人工島の影響

 人工島着工による影響は2つあります。
 一つは水鳥たちの渡来数の減少です。人工島着工前は1万7千羽余り来ていたものが着工後は7千羽ほどに減りました。干潟の沖合いに人工島が出来たことで、スズガモなど海ガモ類の生息域が少なくなり、着工前に比べて1万羽ほど減っています。
 もう一つはアオサが大量発生することです。1994年7月に人工島事業が着工して以降、沖合いでアオサが増え始め10月頃には和白海域が緑色に染まります。北西の季節風が吹き始めるとアオサは沿岸に打ち寄せ堆積し、腐敗すると悪臭を発します。また、干潟に堆積したアオサは、アサリなどを大量に死滅させます。

2.水質・底質

 水質調査は1990年4月から始め、リン酸(PO4)、亜硝酸(NO2)、化学的酸素要求量(COD)、透視度などの項目を測定しています。2009年3月から始めた底質調査(砂質調査)は、干潟の健康度を測るもので、表層酸化層と還元層の厚さを測定しています。和白干潟・海の広場前10メートル地点と150メートル沖合地点の表層酸化層の厚さと還元層の黒色度を測っています。表層酸化層が厚いほど干潟が健康な状態にあることを示します。酸化層の厚さは、夏場には数㎜まで下がり、冬から春にかけて厚くなる傾向にあります。水質は、亜硝酸値(PO4)が0.005〜0.02mg/lで「少し汚染がある」状態、CODは5mg/lで「汚染がある」状態となっています。亜硝酸値(PO4)は若干の改善はあるものの、CODは現在もほとんど変わっていません。リン酸値(PO4)は、グラフに示されるように、現在は「きれいな水」の状態です。

〔写真〕
酸化層と還元層
〔図〕

3.アサリの生息と潮干狩り

 和白干潟にはアサリをはじめ、多くの海棲生物が育っています。春になると多くの人が潮干狩りに訪れ、多いときは1日数千人にもなります。人工島建設に伴い、漁業権がなくなったことで、有明のアサリ業者がアサリ漁を行っています。業者の乱獲の今年は部分的には小さなアサリすらもいない状態になっています。アオサの回収だけではなく、アサリの資源保護も大切です。

(JAWAN通信 No.111 2015年5月30日発行から転載)

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