地球の裏で考えた
〜ラムサール条約締約国会議とウルグアイ〜
ラムサール条約第12回締約国会議(COP12)が今年6月、南米・ウルグアイで開かれた。私が最初、この会議に参加したのは1999年のコスタリカだった。あれから早くも16年。当時は、諫早湾にギロチンが落とされた2年後であった。参加者は、故・山下弘文さん、辻淳夫さんなど日本湿地ネットワーク(JAWAN)のメンバーが主体だった。
当時も、会議には出席の予定がなく、サイドイベントやエクスカーションがおもしろかった。現地在住の日本人ガイドと一緒に「熱帯雲霧林」に行ったり、幻の鳥「ケツアール」を見たりした。刺激的な毎日であった。
今回は旅行会社のツアーではなく、自分で飛行機、ホテルなどをネットで予約する個人旅行で、1か月余りの日程を組んだ。幸いなことに、一緒にコスタリカに行った相棒が同行することになり、ホテルの部屋代も半分で済んだ。
パリ経由で30時間。現地は地球の反対側になる。時差が12時間ということは、日本の昼12時が夜の12時。季節も秋から冬になり、西洋風の街角には枯れ葉が舞い散る、ロマンチックな雰囲気であった。
一時期、スペインが占領支配して都市、建物を造った。その名残で、碁盤の目の道路、石造りの古い建物が目につく。
この国のトップはネットで「世界一貧しい大統領」と評判になったが、市民はノンビリ暮らしている。政府機関も目の前にある都心部の独立公園には、昼間から寝転がって時間を過ごす人や、靴磨きのオジさん、頬キッスの待ち合わせのカップルなどが多い。オマワリだらけの霞が関と比べるのは悲しい。
本題のラムサール会議の報告をしておこう。
6月1日から9日まで、政府関係者は連日会議をする。この会議にはNGOのメンバーも参加できる。しかし英語とスペイン語、フランス語が公用語である。中学校から習った日本の英語では、残念ながら聞きとれない。
有名な「ウルグアイラウンド」なる国際会議があった超一流のホテルは冬のシーズンオフで、観光客もまばらだった。私たち各国のNGOは、このホテルのでっかい一室にブースと称する割り当てられた区画に陣取り、それぞれがポスターの展示、パンフの頒布、対話による説明などをする。
日本からは、主にラムネット日本の
メンバーがブースの手配、設営、運営に参加していた。日本のラムサール条約登録湿地は、今回の会議で、東よか干潟、肥前鹿島干潟(ともに佐賀県)、涸沼(ひぬま=茨城県)、芳ケ平(よしがだいら)湿地群(群馬県)の4か所が増え、50か所となった。
佐賀県の有明海の干潟が2つ同時に登録された。前回登録された荒尾干潟(熊本県)とあわせて、有明海は登録湿地が3つになる。いよいよ有明海の全面登録の夢をめざすときがきた。
ラムサールの会議に参加するのは、多くがすでに登録された地域であり、国であるのは当然ではある。
現実の湿地環境からいえば、開発という名の自然破壊と闘っている地域に注目して行動したい。国内でいえば、泡瀬、和白、三番瀬、そして諫早など、重要な湿地、干潟が軒並み開発の恐怖と闘っている。さらに全国の海岸、河川がコンクリートで固められている。こうした政策の変換を図るためのラムサール会議をめざしたい。
ウルグアイは草原の国だ。山はない。車の製造工場もない。煙突がある、と思えば、家庭の暖炉から、かすかに薪を燃やす煙が見える。
牛を飼って、友人、親戚と暖炉で牛肉を焼いて食べてという、昔ながらの「ガウチョ」(現地の言葉で言うカウボーイ)の雰囲気が、家庭やレストランそしてホテルにあるのが好きである。
会議の途中の日曜日に、政府主催のエクスカーションがあった。
8つのメニューの中から、好きなコースを選んで一日がかりで湿地を巡る。私は一番遠くまで行く、ブラジル国境の近くの、黒い水のラグーン(湖)や湿地を見るコースに参加した。今の寒い時期にはあまり水鳥がいないが、サンタテレサ国立公園は50種ほどの鳥の観察が記録されている。
この国の南はラプラタ川と大西洋に面している。河口の幅は40km。その眺めは雄大
で、特に朝焼け、夕焼けは毎日の慰めともなる。沿岸の歩道は散歩、ジョギングなどで賑わう。夏のシーズンには、サーフィンも加わって観光がメインの産業となっている。
あえて新幹線や高速道路をつくって遠くまで走り回らなくても、目の前がすべて豊かな自然とたくさんの小鳥たち。人と自然、生きものすべてが毎日をストレスなく暮らす。お金はないけど、なんだか豊かな暮らしがここにはある。
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