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都市河川の再生・復権をめざして

〜よこはまかわを考える会〜


 「よこはまかわを考える会」は、川の自然を大切にし、花鳥風月のまちづくりを繰り広げている市民団体です。会の活動を紹介させていただきます。発足当時からのメンバーにお聞きした話や、『都市の川』(農山漁村文化協会)、「第34回横浜縦断カヌーフェスティバル」のプログラムに書かれていることを元にまとめさせていただきました。(編集部)

◇会の発足

 「よこはまかわを考える会」は1982年2月に発足した。目的は、都市河川や運河の再生・復権である。見る、学ぶ、遊ぶ、知らせるがモットーであった。
 かつての横浜港は日本の玄関であった。横浜の街は、大岡川を中心に多くの運河がはりめぐらされ、流通の一大拠点として栄えていた。運河は、横浜港に各地から着いた荷物といっしょに、ハマの新しい風を横浜の街に吹きこんでいた。
 しかし運河が役目を終えると、横浜の川はどんどん汚れていった。生活雑排水が流れこむ「どぶ川」となってしまったのである。「考える会」の発足は、それらを人が親しめる川に蘇らせることが目的だった。現代のあわただしい暮らしにやすらぎをもたらすウォーターフロントとして蘇らせるようとしたのである。
 コンクリートで固められた都市の「どぶ川」では、守るものもない。反対するにしても、誰に対し、何について反対すればよいかわからない。しかしこのままではダメだ。何とかしなれば──。そういう思いから、みんなで都市河川の再生を考えていこうということになり、「考える会」という名称になった。
 発足時のメンバーは20人である。三木和郎のペンネームで『都市の川』(前出)を刊行した森清和さん(故人)、活動のスライド説明を受け持った吉村伸一さん、会の機関紙『かわを考える会ニュース』の編集長として毎号イラストを描いた白瀧敏弘さんなどであった。いずれも横浜市の職員である。自主的な勉強会や仕事で知り合った仲間たちからはじまった。
 現在の会員は約100人である。

写真5-1
大岡川のハグロトンボ調査

◇川の清掃と楽しいイベントを結合

 「考える会」は最初から代表や会長を置いていない。会則もない。イベントを提案した人が中心となってプロジェクトを組み、みんなが協力してさまざまな活動を繰り広げることにしている。会員全員が事務局員のつもりで参画する。これが「考える会」の方式である。
 メンバーは層が厚い。学生、主婦、サラリーマン、料理店主、大学・小中学校の先生、環境デザイナーなど、多彩である。
 最初は、悪臭のする横浜の川をきれいにし、人が親しめるものにすることにとりくんだ。
 まず、近くの川を見て歩くことにした。すると、人工的だと思っていた都市の川にも川らしい自然を発見することがある。そのまわりからゴミを拾っていった。
 川の中から出てくるゴミは、あき缶、あきビン、発泡スチロール、ポリ袋、プラスチック容器などがほとんどだが、なかには自転車、バイク、電気洗濯機など大型のゴミもある。たとえば戸塚区を流れる柏尾川では、ゴミが島を形づくっていた。
 川の掃除だけでなく、掃除と楽しいイベントを結びつける──。これが「考える会」の得意とするところである。
 掃除したあとの川では、川に綱を渡して渡ったり、手づくりカヌーのレースをしたりして子どもたちが遊びはじめる。なかには泳ぎ出す子どももいる。岸辺では、拾ったゴミを燃やして焼きいもをつくったり、バーベキューをしたりする。そのまわりで大人たちはお酒を飲む。お酒は水とは切っても切れない関係だからと言っては、何かにつけてお酒を飲む機会をつくっている。こうした活動から次々と新しいグループが出てきたり、「考える会」からさまざまな会やプロジェクトが生まれたりした。

写真5-2
「出会いのYEN」

◇主なイベント

 「考える会」は、川を楽しむことを目的とし、さまざまなイベントを繰り広げている。地図を持って流域を歩く「尺取虫(しゃくとりむし)」をはじめ、「舟で櫓(ろ)こぎ体験」、「大岡川のハグロトンボ調査」、「こども自然公園ホタル観察会」などである。
 最大のイベントは「横浜縦断カヌーフェスティバル」である。主催は、「考える会」と神奈川県カヌー協会、横浜カヌー協会で構成する「横浜縦断カヌーフェスティバル実行委員会」である。
 このカヌーフェスティバルは、横浜の都心部を流れる大岡川の下流部が舞台である。横浜開港の場としての横浜港や都市河川の魅力を多くの市民に見直してもらうために開いている。第1回の開催は、「考える会」の発足と同時の1982年である。以来、「よみがえれ運河」をテーマにし、毎年開催している。
 2015年は10月18日に34回目を開き、220艇、252人が参加した。近年は神奈川県外からの参加者も増えている。
 カヌーフェスティバルは、水辺の都市景観を演出したとして、1992年に「横浜まちなみ景観賞」を受賞した。いまでは水辺の風物詩として市民に定着している。
 日常の活動として定例研究会や機関紙の発行、近くの川を見る会、遠くの川を見る会などもおこなっている。
 全国規模で開催されるフォーラムやサミットなどにも参加・協力している。森清和さんがかかわっていた「川の日ワークショップ」、「いい川・いい川づくりワークショップ」、「水郷水都全国会議」、「全国トンボ市民サミット」などである。
 

◇「横浜水辺賞」

 さらに、「考える会」として独自に「横浜水辺賞」を設けている。この賞は、「考える会」の仲間たちの推薦によって、注目すべき活動をした団体・個人に贈るものである。2015年は、ハグロトンボ調査を熱心に支援した横浜市立舞岡中学校の校長先生と、先駆的にアマモ場再生事業にとりくんだ株式会社高千穂が受賞した。
 この賞は、いいことをした行政にも贈っている。国土交通省河川環境課などである。

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 「どぶ川」だった横浜の川は、少しずつきれいになっている。行政(国土交通省など)も川の環境を重視するようになった。川沿いに歩道が整備されるなど、市民が親しめるような川になりつつある。

写真5-3
第34回横浜縦断カヌーフェスティバル。後方の高層ビルは横浜ランドマークタワー=2015年10月18日
写真提供/よこはまかわを考える会
(JAWAN通信 No.114 2016年2月20日発行から転載)

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