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■自然と環境を守る交流会の講演(要旨)

全国8割のアサリ産出量を誇る干潟を守る

 〜三河湾・六条潟〜

アジアの浅瀬と干潟を守る会 山本茂雄さん

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山本茂雄さん

 私の家は貝を扱う問屋だった。先祖代々、アサリやハマグリを扱っていた。ところが私が引き継いだあと、アサリやハマグリが激減した。商売が成り立たなくなった。そこで、海外の産地を開拓せざるをえないようになった。
 これではどうしようもないということで、「アジアの浅瀬と干潟を守る会」をつくった。
 この会をスタートさせたとき、アサリの漁獲量は全国で5万トン以上あった。しかし、現在は3万トンを割りこんでいる。それっきり、なかなか回復しない。
 現在、日本でとれるアサリは、10粒のうち8粒が三河湾でとれている。じつは、三河湾のアサリ漁獲量は、私たちの会が発足してから増やした。
 三河湾東部の豊川河口に六条潟という砂礫干潟が残っている。かつては3000haを超す広大な干潟であった。主にハマグリの産地だった。しかし1970年代以降、港湾建設のために埋め立てが進んだ。そのため、六条潟の干潟面積は360haに激減した。とはいえ、いまもアサリの発生量は日本一である。世界的にみても最高水準のアサリ発生水域となっている。
 愛知県は2011年1月、三河港港湾計画の改訂作業を進めた。改訂案は、①六条潟の干潟部分を約80ha埋め立てる。②埋め立て地を結ぶため、六条潟を貫く臨港道路を建設する。③沖合に200haの人工島を建設する──などというものであった。
 私たち「守る会」は、この計画を中止させるため、漁業関係者やアサリ問屋、大手流通会社、トヨタ自動車などに反対の意見表明を働きかけた。その結果、愛知県内の漁業関係者とアサリ問屋はすべてが反対した。さらに、日本の主要都市の中央卸売市場や、イオンなど19社の大手スーパーマーケットがパブリックコメント(意見公募)に対して反対意見を表明した。イトーヨーカ堂、そごう、西武などを傘下にもつセブン&アイ・ホールディングスも反対を表明するようになった。愛知県政に絶大な影響力をもつトヨタ自動車も計画案に難色を示した。
 こうした結果、次期港湾計画案は2011年3月に白紙撤回となった。しかしながら、臨港道路の建設計画だけは残ることになった。
 六条潟は、土砂を河口まで運ぶ健全な豊川に依存している。その豊川の上流に設楽(したら)ダムが計画されている。これは、日本からアサリをさらに減少させ、縄文時代からつづく伝統食文化をも葬り去る、世界に恥じる天下の愚行である。そのため、私たちは設楽ダムの反対運動にも参加している。

(JAWAN通信 No.114 2016年2月20日発行から転載)

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