どの故郷にも戦争に使う土砂は一粒もない
「辺野古埋立土砂搬出反対全国連絡協議会」は、関係する全国の7団体で2015年5月に結成された。この1年、沖縄と西日本の土砂搬出地、さらには埋め立て用ケーソン建造に反対する運動など12県18団体がつながり、今年(2016年)4月17日〜20日には初めて沖縄現地での学習交流集会&フィールドワークが実現した。名護市内で開催された集会(18日)には、「本土」からの28名を含む300名の市民らが参加した。
■辺野古土砂採取をめぐる問題点
─講師3名の基調講演から─
18日の集会では、①向井宏さん(海の生き物を守る会代表・北海道大学名誉教授)、②湯浅一郎さん(ピースデポ・環瀬戸内海会議副代表)、③北上田毅さん(沖縄平和市民連絡会・現地抗議船船長)の3名が講演・報告をした。
向井さんは、「土砂採取と海の汚染・奄美大島での潜水調査」と題して講演した。戦後の沖縄本島では埋め立て事業によって自然海岸が消滅していった。そういうなかで辺野古・大浦湾を守る意義を強調した。奄美での調査の経験から、採石は山の自然を破壊するだけでなく、貯蔵場所からの土砂流出で海洋汚染をもたらし、サンゴを死滅に追い込んでいる実態も報告した。辺野古に送る、送らないに限らず、採石自体が公害の源であり自然破壊であることを強調し、土砂を搬出させないことが故郷の自然を守ることにつながるとした。
湯浅さんは、瀬戸内海での海砂採取反対運動の経験から、海砂採取は海底からの強引な吸収により海底地形の変化を生み、洗浄作業による泥水が透明度を下げることを指摘した。辺野古では海砂採取と埋め立てが相乗的効果を生み、ジュゴンやサンゴの生態系にとどめを刺す可能性を警鐘した。
北上田さんは、米軍基地内の土壌汚染が問題にされるなかでキャンプシュワブ内の土砂が埋め立てに使用される危険性や、県外土砂に紛れ込む特定外来生物対策などが事業者任せになっている点などを指摘、県条例に罰則規定を設ける必要を提起した。
■土砂採取側の環境・生活破壊
続いて土砂採取とケーソン建造の各地から9名の発言を受けた。鹿児島・奄美/自然と文化を守る奄美会議、香川・小豆島/環瀬戸内海会議、福岡・門司/「辺野古土砂搬出反対」北九州連絡会、熊本・天草/辺野古土砂搬出反対熊本県連絡会、長崎・五島/五島列島自然と文化の会、山口・周南防府/辺野古に土砂を送らせない!山口のこえ、鹿児島・佐多岬/南大隅を愛する会、三重・津/辺野古のケーソンをつくらせない三重県民の会、沖縄/本部町島ぐるみ会議である。
各地からの報告は、この集会に合わせて発行されたパンフレット『どの故郷にも戦争に使う土砂は一粒もない』に詳しい。
以下は、報告から印象に残った点、学ばされた点についての私的メモである。
第1に、私自身の反省から。“全国各地からの土砂搬出ができなければ辺野古新基地はできない”──。問題の焦点をこのように考えてきたが、埋め立て側と同等の環境破壊が採取側にも生じる。あらためてこの事実を突きつけられた。
第2は、関係する各地で環境問題に関わって長年の継続した取り組みがあったことである。それが辺野古土砂搬出をめぐって各地の連携を可能にした条件だろう。
第3は、多くの搬出地が過疎地・離島のかかえる問題のなかで呻吟している事実である。1300億円といわれる土砂採取・運搬費は、“二束三文の土砂が金になる”という辺野古バブルを生み、長年築いてきた地域の生業をも破壊しようとしている。
第4は、佐多岬・五島・奄美の採取地につきまとう、核廃棄物最終処分場計画である。掘ったあとを核廃棄物で埋め返す。辺野古新基地は、原発をめぐる闇の部分とも深く結んでいるのかもしれない。
■政府・自治体・企業へ要求対置を
最後に、今後の活動の課題として思うことを2点。
ひとつは、「山口のこえ」からの提起。山口県は県内に繁殖する特定外来生物アルゼンチンアリ防止のため、県外自治体と広域協議会をつくっている。沖縄県が県外土砂搬入規制条例を制定したように、搬出自治体からも県外への土砂搬出を規制する声を上げるべきではないか。
もうひとつは、現在取り組まれている「土砂搬出反対」「ケーソンつくるな」の署名活動を継続し、対政府・対関係企業との交渉を強めることだ。政府はもとより、私企業の経済活動であっても、環境破壊や沖縄の自治権破壊、戦争に連なる基地建設への荷担は許されない。これらは「本土」側の民衆運動が担うべき課題である。
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