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日本の湿地を守ろう

〜日本湿地ネットワークが豊橋市で総会とシンポ〜


 日本湿地ネットワーク(JAWAN)は6月25日、愛知県豊橋市で総会とシンポジウムをひらきました。

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「日本の湿地を守ろう 2016」と題したシンポジウム=
2016年6月25日、豊橋市

◆減少・悪化が続く日本の湿地

 総会では、湿地の減少・悪化をどう防ぐかが緊急課題となっていることを確認しあいました。
 日本の湿地は減少が著しく進んでいます。また、今年4月に環境省が発表した調査・分析結果によれば、重要湿地のなかで生物分類群ごとの視点でみた961湿地のうち823湿地について情報を得られ、そのうち524湿地は「悪化傾向」にあるとされています。悪化の主な原因は開発工事です。
 2016年度の活動方針では、全国各地の湿地保全運動を支援したり行政交渉をくりひろげたりするなどのとりくみが確認されました。

◆赤潮や貧酸素化の元凶は干潟・浅瀬の埋め立て

 「日本の湿地を守ろう2016」と題したシンポジウムでは、名城大学大学院総合学術研究科特任教授の鈴木輝明さんが「三河湾の現状と課題」、アジアの浅瀬と干潟を守る会の山本茂雄さんが「貝屋の欲目から診た日本の干潟(貝産地)の現状」と題して講演しました。
 鈴木さんは、三河湾が日本一のアサリ産出量を誇るほどたいへん豊かな内湾であることを紹介しながらも、干潟(六条潟)に土砂を供給する豊川の上流に設楽(したら)ダムが建設されるとアサリの一大産地は大打撃を受けると警鐘を鳴らしました。また、三河湾の環境に深刻な問題をおよぼしている赤潮や貧酸素化の元凶は干潟や浅瀬の埋め立てであると断言しました。
 山本さんは、「二枚貝の流通状況をみると、国内産はどれもこれも捕れなくなっている」とのべました。ハマグリ類にいたっては9割以上が輸入で占められているとのことです(上のグラフ)。そういうなかで、六条潟(豊橋市)の稚貝の発生と供給はわりに安定しています。ほかの2位以下の産地と比べてみると、六条潟の稚貝の発生量はたいへん多いそうです。
 二人の講演のあとは各地の報告です。全国各地の湿地の状況や保全運動などを湿地保全団体のメンバーが報告しました。アンパルの自然を守る会の山崎雅毅さん(沖縄・石垣島のアンパル)、和白干潟を守る会の山本廣子さん(博多湾の和白干潟)、環瀬戸内海会議の松本宣崇さん(瀬戸内海、辺野古埋め立て用土砂搬出)、NPO法人ウエットランド中池見の笹木智惠子さん(敦賀市の中池見湿地)、三番瀬を守る会の田久保晴孝さん(東京湾三番瀬)です。

◆六条潟と葦毛湿原を見学

 翌26日は豊橋市の六条潟と葦毛(いもう)湿原を見学しました。葦毛湿原は貴重な植物群落の宝庫です。1992年には愛知県の天然記念物に指定されました。
 葦毛湿原は1960年代以降「森林化」が進みました。都市ガスの普及で木を切ることがなくなったからです。失われた湿原をとりもどすため、大規模な回復作業がつづけられています。回復作業は、ボランティアの協力をえて豊橋市教育委員会がおこなっています。その成果が実を結び、愛知県の絶滅危惧種に指定されているミカワバイケイソウが多く咲くようになりました。姿を消していたコバノトンボソウなども復活しました。そのようなとりくみを豊橋市文化財センターの贄(にえ)元洋さんにくわしく教えていただきました。

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葦毛湿原を見学するシンポジウムの参加者=2016年6月26日、豊橋市
(JAWAN通信 No.116 2016年8月20日発行から転載)

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