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■シンポジウム「日本の湿地を守ろう 2016」報告要旨

昔のアンパルをとりもどすために

アンパルの自然を守る会 事務局長 山崎雅毅さん
写真4-1

☆2005年にラムサール条約登録

 アンパルというのは「網を張る」という意味の方言である。
 アンパルは2005年にラムサール条約に登録され、2008年に西表石垣国立公園に編入された。アンパルの自然を守る会は2009年に結成した。それまでは、アンパルをラムサール条約に登録するための運動があった。
 アンパルは石垣島の名蔵川の河口域に形成されたマングローブ湿地である。砂嘴(さし)に囲まれた半閉鎖汽水域となっている。於茂登岳(おもとだけ)、バンナ岳、前勢岳(まえせだけ)を水源としている。

図4-1

☆自然環境を破壊するもの

 アンパルの自然環境を破壊するものとして、沖縄復帰後の土地改良事業がある。耕地面積を拡大して大型の機械が入れるようにするものであったが、台風や豪雨などの自然を無視した事業であったため、大失敗をした。沖縄本島の周辺では、土地改良事業によってサンゴ礁がほとんど消滅した。
 それから、30年以上前に浦田原排水路が建設された。神田排水路と嵩田排水路も建設された。目的は乾田化であった。これらの排水路建設によって淡水湿地が喪失した。湿地のもっている浄化機能が喪失し、淡水湿地生物が減少した。畑からアンパルに大量の栄養塩類、赤土が流れ込むという環境になってしまった。
 次に、石垣島精糖工場の排水がアンパルに流入していることである。創業以来、垂れ流しであり、高濃度の栄養塩類(糖分)がアンパルに流入しつづけた。アンパルのラムサール条約登録後に処理設備ができて、やっと75ppmに下がった。工場の場合は規制値が120ppmとなっているので合法である。
 つづいて、十数年前にできた名蔵ダムである。このダムの建設によってアンパルへの河川水の供給が減った。
 さらに現在はゴルフ場建設計画が進んでいる。前勢岳の北側の牧草地をつぶしてゴルフ場をつくる計画である。ゴルフ場ができると、アンパルの重要な水源が破壊される。
 このほかに、大型リゾート開発も計画されている。

☆環境変化

 アンパルの環境は常に変化している。①アンパルが浅くなってきている。②マングローブがどんどん増えている。③マングローブの縞(しま)枯れ現象がおきている。④赤土が流入し、土壌がかたくなっている。⑤精糖工場の排水がアンパルを富栄養化している。⑥ゴミは減っているが、不法投棄はなくなっていない。⑦キバウミニナが大量発生する一方で、食べられる二枚貝が減っている──などである。
 こうしたことから、アンパルの生物多様性は貧弱になっている。

☆今後の課題

 私たちは、アンパルの現状をこれ以上悪化させてはいけない、できれば昔のアンパルをとりもどすという覚悟で活動にとりくんでいる。
 7月14日、アンパル再生計画の具体的提案である「石垣島・名蔵アンパルの自然環境を取り戻すための提案と協議要請」を沖縄県環境部に提出した。
 アンパルの環境を保全するためには、自然、歴史、文化、産業など名蔵のことを丸ごと理解することが必要である。そのため、名蔵やアンパルにくわしい専門家、研究者、地
 元住民、事業者との連携も進めている。
 今年度の重点課題としては、次の4点を掲げている。①前勢岳ゴルフ場計画を止める。②アンパルの環境調査を実施する。③こどもアンパルクラブの活動を充実させる。④国立自然史博物館の誘致運動をする。

(JAWAN通信 No.116 2016年8月20日発行から転載)

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