トップ ページに 戻る
■シンポジウム「日本の湿地を守ろう 2016」報告要旨

和白干潟の自然を未来の子どもたちに残そう!

和白干潟を守る会 代表 山本廣子さん
図5-1

 和白(わじろ)干潟は博多湾の北東端に位置し、福岡市東区に属している。
 私たちは和白海域の全体を和白干潟とよんでいる。海域の面積は約300haである。潮が引くと沿岸に干潟があらわれる。干潟の面積は約80haである。

図5-1

*「守る会」の結成

 かつて、和白干潟の全体を埋め立てる計画が発表された。私たちは300人ぐらいの署名を付け、市議会にたいして保全願いを提出した。この請願が市議会で採択され、和白干潟は残ることになった。1987年のことである。そのときは環境庁や福岡県知事も保存の意見書を出してくれた。これらが追い風になった。
 その直後の1988年4月に「和白干潟を守る会」を結成した。以来、保全活動をずっとつづけている。

*自然の海岸線が残る数少ない干潟

 博多湾はほとんどが埋め立てられてしまった。そのなかで、和白干潟の周辺と、西のほうの今津湾にだけ自然海岸が残っている。
 和白干潟には3本の川が流れ込んでいる。海底からも水が湧きあがっている。
 和白干潟のセールスポイントのひとつは、主に砂質の干潟ということである。運動靴で干潟を歩くことができる。日本海側では最大規模の干潟とされている。
 それから、自然の海岸線が残っている。干潟の背後にヨシ原や松林があるのは全国でもたいへんめずらしい。
 和白干潟にはたくさんの生き物が生息している。渡り鳥のルートの交差点にもなっている。
 しかし、和白干潟の目の前に大きな人工島ができた。これによって潮の流れが悪くなり、干潟にアオサが堆積するようになった。アオサの大量堆積は干潟を痛めている。
 和白干潟にはクロツラヘラサギやミヤコドリもやってくる。和白干潟にはミヤコドリが1800年代から飛来しているといわれている。江戸時代に来ていたという記録も
 ある。ミヤコドリの見物客が全国から和白干潟にやってくる。しかしいまはクロツラヘラサギのほうが有名になりつつある。

写真5-2
クロツラヘラサギ

*最近の活動

 私たちは和白干潟を守るためにさまざまな活動をつづけてきた。自然観察会、クリーン作戦、水質・砂質調査、生物調査、和白干潟まつりなどである。
 最近はこんな活動もしている。
 ①和白干潟の集水域を保全する「山・川・海の流域会議」のとりくみ。「守る会」など6団体が協力し、流域の清掃活動や自然観察会をつづけている。
 ②和白干潟の「海底湧水観察会」を2013年8月にひらき、海底湧水の存在を知ることができた。酸素を多く含む塩水が湧きだしていて、和白干潟の海水を浄化していることがわかった。人工島がつくられたあともアサリが多くとれるのは、海底湧水があるためだと思われる。
 ③和白干潟に近い福岡市立和白小学校は、夏と冬に和白干潟で自然観察会をおこなっている。その観察会やまとめの発表会に「守る会」のメンバーも参加している。
 ④クリーン作戦に参加する企業や大学、高校などの参加者が増えた。独自で和白干潟の自然観察とクリーン作戦を企画する企業もでてきた。

写真5-1
自然観察会

*ラムサール条約登録をめざして

 私たちはラムサール条約登録運動にも力をいれている。
 和白干潟は2004年からラムサール条約湿地の候補地になっているが、なかなか登録が進まない。和白干潟は国指定鳥獣保護区に指定されている。しかしラムサール条約湿地に登録されるためには同保護区の特別保護地区に指定されることが条件となっている。
 次回(2018年)のラムサール条約締約国会議で和白干潟が登録されるよう、署名活動を進めている。

(JAWAN通信 No.116 2016年8月20日発行から転載)

>> トップページ >> REPORT目次ページ