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盤洲干潟のラムサール条約登録を要請

〜5団体が千葉県と交渉〜


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盤洲干潟のラムサール条約登録などを求める要望書を県の担当者に手渡す「小櫃川河口・盤洲の干潟を守る連絡会」の御簾納照雄事務局長(右)=2016年8月3日、千葉県庁で
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盤洲干潟のラムサール条約登録などについて県と話しあう参加者

 盤洲(ばんず)干潟は千葉県木更津市の小櫃川(おびつがわ)河口にひろがる日本最大級の砂質干潟です。干潟(1400ha)の後背地には43haの広大な塩性湿地がひろがっています。東京湾でただ一カ所、原風景(自然の海岸線)が残されているのです。
 盤洲干潟の保全活動をつづけている自然保護団体は8月3日、県と交渉し、ラムサール条約や県自然環境保全地域への登録(指定)を要請しました。
 要請したのはJAWANの加盟団体(小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会、県野鳥の会、千葉の干潟を守る会、県自然保護連合)と「小櫃川の水を守る会」の5団体です。県からは自然保護課と漁業資源課が出席しました。
 盤洲干潟の鳥獣保護区指定などが進まない理由について、県はこう答えました。
 「今年の4月から5月にかけて、盤洲干潟の鳥獣保護区指定について金田漁協などの関係漁協に文書で意見照会をした。すべての漁協から、鳥獣保護区指定に反対との回答があった。反対の主な理由は、①ノリに鳥の羽が混入する、②鳥によって魚介類が食べられてしまう、であった」
 参加者はこうのべました。
 「ノリの生産者に直接聞いたところ、ノリに羽毛が混入しても自動的に取り除く機械があるので関係ないとのことだった。また、鳥が魚介類を食べる量はたいしたものではない、という話を漁師たちから聞いている。そもそも鳥獣保護区などに指定されれば鳥が増えるということはない。それらの反対理由は表向きであって、ほんとうの反対理由は別のところにあるのではないか」
 「漁協の意見を文書で照会するだけでなく、県が主導して鳥獣保護区指定やラムサール条約登録を進めてほしい」
 こんなことも要請しました。
 「盤洲干潟と三番瀬の干潟・浅瀬は東京湾の漁業資源の基礎生産力を支えている。しかし、盤洲干潟と三番瀬を恒久的に保全する法的手段がない。千葉県や東京湾の漁業のためにも、ラムサール条約への登録などを積極的に進めてほしい」
 「2020年の東京オリンピックでは千葉市の幕張メッセも競技会場になる。盤洲干潟や三番瀬をラムサール条約湿地にすることは、環境を重視する千葉県を世界にアピールすることになる。2018年のラムサール条約締約国会議(COP13)において盤洲干潟と三番瀬がラムサール条約湿地に登録されるようにしてほしい」
 以下は、5団体が千葉県知事に提出した質問・要望書です。


2016年7月19日
 

 千葉県知事 森 田 健 作 様

小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会 代 表 小関公平
小櫃川の水を守る会 代 表 関   巌
千葉県野鳥の会 会 長 富谷健三
千葉の干潟を守る会 代 表 近藤 弘
千葉県自然保護連合 代 表 牛野くみ子

 盤洲干潟(小櫃川河口干潟)の自然環境保全地域指定と
 ラムサール条約登録についての質問と要望
 
 平素より千葉県の環境保全に尽力されていることに対し感謝申し上げます。
 私たちは、東京湾に残された貴重な盤洲干潟を後世に残すために活動している団体です。
 盤洲干潟は日本最大級の砂質干潟です。干潮時は2キロ沖まで干潟が現れます。干潟の後背地には43ヘクタールの広大な塩性湿地がひろがっています。そこにはヨシが生い茂っています。東京湾でただ一カ所、原風景(自然の海岸線)が残されているのです。盤洲干潟では、世界でここにしかいないという生き物も2種類確認されています。キイロホソゴミムシとバンズマメガニです。
 私たちは長年にわたり、盤洲干潟が県の自然環境保全地域やラムサール条約湿地に指定(登録)されるよう要望してきました。盤洲干潟は環境省の「日本の重要湿地」と「ラムサール条約湿地潜在候補地」にあげられています。しかし、自然環境保全地域指定やラムサール条約登録が進みません。そのため、盤洲干潟は開発の危機にさらされています。
 つきましては、下記のとおり質問と要望をさせていただきます。

 記

 1.日本の湿地は減少が著しく進んでいます。日本に存在する湿地は明治・大正時代の40%足らずでしかないとされています。千葉県についていえば、湿地の減少率は90%を超えています。湿地激減の主因は埋め立てなどの開発工事です。とくに干潟は惨たんたる状況になっています。
 また環境省が平成28年4月に発表した資料によれば、「日本の重要湿地500」で生物分類群ごとの視点でみた961湿地のうち823湿地について情報を得られ、そのうち524湿地は「悪化傾向」にあるとされています。
 このように湿地の減少や悪化が続いていることについて、県はどのように認識されているのでしょうか。また、どのような対策を講じようとされているのでしょうか。
 
 2.盤洲干潟の鳥獣保護区指定や自然環境保全地域指定、ラムサール条約登録について、県はどのように考えておられるのでしょうか。
 
 3.盤洲干潟の鳥獣保護区指定や自然環境保全地域指定、ラムサール条約登録をめぐる状況と、指定(登録)が進まない理由を教えてください。
 
 4.日本や東京湾の漁業衰退は、漁業資源の基礎生産力を支えている干潟・浅瀬が埋め立てによって激減したことと密接にかかわっています。
 千葉県や東京湾の漁業のためにも、貴重な干潟の恒久保全策を講じることが求められていると考えます。この点について県の考えを教えてください。
 
 5.2020年の東京オリンピックでは幕張メッセも競技会場になります。盤洲干潟や三番瀬をラムサール条約湿地にすることは、環境を重視する千葉県を世界にアピールすることになります。
 2018年のラムサール条約締約国会議(COP13)において盤洲干潟と三番瀬がラムサール条約湿地に登録されるよう、ご尽力をよろしくお願いいたします。


(JAWAN通信 No.116 2016年8月20日発行から転載)

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