三河湾(渥美半島・表浜を含む)の
ラムサール条約登録を求める要望書
渥美自然の会 代表 大羽康利
表浜ネットワーク 代表 田中雄二
三河湾は平均深度が10mに満たない浅海で、かつては広大な干潟・浅瀬をもっていました。豊川や矢作川から流入する清流と栄養塩、洪水流によって運び込まれる土砂によって、豊かな生物生産、漁獲高を誇る宝の海でした。しかしながら、高度経済成長の波とともに干潟・浅瀬の浚渫、埋立てが進み、1970年代以降、赤潮が頻発し1980年代から90年代には、夏季の貧酸素水塊が生き物を絶滅させる汚濁の海へと変わりました。
その後、埋立てを止めるための漁民、市民、科学者等の粘り強い取り組みによって埋立事業が抑制される(2011年4月の第六次三河港港湾計画に六条潟の保全が明記)とともに、愛知県や国が浚渫後の深堀を埋め戻したり、800haにのぼる干潟・浅場造成を行うなど、環境修復・保全事業が実施されてきました。
この環境修復・保全の取り組みと呼応して、愛知県水産試験場と愛知県漁連によって、豊川河口の六条潟で大量発生するアサリ稚貝を採取し、三河湾各地の漁場(干潟・浅場)に撒いて、成長したものを漁獲する、愛知(三河湾)方式が工夫され、近年の日本のアサリ漁獲の過半を占めるまでになっていることは注目されます。まさに、わが国における「賢明な湿地の利用」例として、特筆されるべきものと思われます。
ラムサール条約への登録によって、上記のような行き過ぎた開発を反省し、環境修復・保全の手を尽くしながら、賢明な利用を行う湿地管理のあり方が、いっそう定着し、全国的、国際的にも良い影響を与えることになることは間違いありません。
三河湾一帯は、三河湾国定公園に指定されており、国定公園は、渥美半島の太平洋岸、いわゆる「表浜」をも含んでいます。表浜沿岸は海砂の採取が禁止されている国内でも貴重な浅場です。水鳥は、状況に応じて表浜の浅海域も利用しており、また、表浜はアカウミガメの産卵場となっています。三河湾と渥美半島の沿岸を一体として条約登録することが望まれます。
以前から指摘されていますが、三河湾は日本列島の太平洋岸中央部の数少ない水鳥の中継・越冬・繁殖地であり、保護保全の措置は国際的な義務にもなっています。
以上のような理由から、大臣におかれましては、次回ラムサール条約締結国会議(COP13)において、三河湾(表浜を含む)が登録されますよう、よろしくご尽力をお願いします。
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