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吉野川河口をラムサール条約登録湿地に(要望)

環境大臣 山本公一 様
 日本野鳥の会徳島県支部
 支部長 三宅 武 

 吉野川河口(徳島県徳島市〜板野郡藍住町〜名西郡石井町)には豊かな生態系を維持する干潟・湿地が広がっています。
 私たちはこの干潟・湿地を守るために30年以上活動してきました。その一つにこの吉野川河口をラムサール条約の登録湿地にするためのいろいろな活動があります。
 以下に吉野川河口が登録基準を満たしている項目を提示します。
 次回のラムサール条約締約国会議(COP13)において、吉野川河口が登録湿地にリストアップされるよう、強く要望いたします。
 
 1.地名
 名称 吉野川河口・汽水域
 2.所在地
 徳島県徳島市〜板野郡藍住町〜名西郡  石井町
 3.基準
★自然度が高く、日本の温帯域では他に類を見ない希有な河口域である。長大な汽水域に塩性湿地が豊富に点在している。(基準1)
 とりわけ都市部の大河川では、最も破壊されやすい河口部付近の干潟が海浜植物のゾーンを含めて維持されている。
 
★鳥類では環境省と徳島県で絶滅危惧Ⅰ類のカラシラサギ、クロツラヘラサギ、ツクシガモ、ヘラシギ、カラフトアオアシシギ、セイタカシギ、環境省Ⅱ類で徳島県Ⅰ類のズグロカモメが渡来する。ミサゴ(環境省で準絶滅危惧種、徳島県でⅡ類)は冬季に20羽以上が河口に群れる。ホウロクシギ(環境省、徳島県で絶滅危惧Ⅱ類)は春の渡りで100羽以上が飛来していることが確認されている。この汽水域では約200種が記録されている。
 
★稀少性の種も多い。(基準2)
 底生生物は、シオマネキ、ハクセンシオマネキ、ヒロクチカノコ、ワカウラツボ、サザナミツボ、カワアイ、マゴコロガイ、ハマグリ、ハナグモリ、ムツハアリアケガニ、フタハピンノなど約40種。
 魚類のタビラクチ、イドミミズハゼ、トビハゼ、ヒモハゼ、チクゼンハゼ、マサゴハゼなどを挙げることができる。河口沿岸域は、また、かつてはアオギスの生息地として知られていた。
 
★河口域のヨシ群落は、環境省の特定植物群落に登録されている。汽水域には、ウラギク(環境省と徳島県の絶滅危惧Ⅱ類)、イセウキヤガラ(徳島県の絶滅危惧Ⅱ類)、コアマモ(徳島県の準絶滅危惧)などの希少種が良好に生育しており、群落規模も全国有数であり、吉野川河口の汽水域は植物学的にも貴重な場所である。
 昆虫では、環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類とされているルイスハンミョウ、ヨドシロヘリハンミョウが生息している。ルイスハンミョウは砂地の干潟に、ヨドシロヘリハンミョウはヨシ原などに伴ってできる泥質の干潟を好む種である。上流部の鮎喰川との合流部付近では、環境省の絶滅危惧Ⅱ類に指定され、成虫はやや乾燥した砂地を好むカワラハンミョウも記録されている。河口部周辺の干潟には、環境省の準絶滅危惧種に選定されているオオヒョウタンゴミムシも生息している。
 
★河口から14.5kmと長い汽水域に沿って干潟とヨシ原が続き、それによって幅広い塩分濃度勾配と多様な底質環境をもっていることで底生生物相も極めて豊富である。具体的には、265種もの底生生物種が記録されており、シオマネキ、クシテガニ、ヒロクチカノコなどの生息数の多さは、他に類をみない。長い汽水域をもつことで、汽水域固有の種であるヤマトシジミ、イトメ、アリアケモドキなどが多いことも特徴的である。(基準3)
 
★広大な汽水域は、吉野川水系の魚類194種のうち144種(通し回遊魚19種、周縁性淡水魚)を支え、アユ、アユカケ、サツキマスなど多種多様な魚類の生息場所となっている。(基準8)
 
★長い汽水域は、ヤマトシジミ漁や、青海苔養殖、沿岸漁業などの生業を支え、人の暮らしと深く関わっている。また、広大な河口の景観は、多くの人々に愛されている。河口干潟は環境教育の場としてたくさんの人々が利用し、ワイズユースとしての価値が高い。
 
★重要湿地500にリストアップされている。
 
★「東アジア〜オーストラリア地域におけるシギ・チドリ類重要生息地ネットワーク」に参加している。(河口〜吉野川大橋500ha)

(JAWAN通信 No.117 2016年11月30日発行から転載)

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