トップ ページに 戻る

防衛省・環境省交渉の主なやりとり

*生物多様性国家戦略との関係

 ◇全国協議会
 防衛省と環境省は、私たちが質問したことについて基本的にほとんど答えていない。
 生物多様性国家戦略は、生物多様性の危機として4つあげている。辺野古の埋め立てについていえば、「第1の危機」の「開発など人間活動による危機」と、「第3の危機」の「人間により持ち込まれたものによる危機」(外来種問題)があてはまる。
 辺野古の場合は、辺野古の海を埋めてしまうので、そこに生息している生き物たちを抹殺するということを人間がやることになる。そのことによって沖縄本島の東側海岸全体の生態系の構造はどういうふうに影響を受けるのか。それは、生物多様性国家戦略が掲げる「第1の危機」に該当するはずだ。そういうことを検討したうえで、「生物多様性国家戦略に反するものではない」と話されたのか。
 
 ◆防衛省
 防衛省としては、環境影響評価のプロセスのなかで環境への負荷などを調査し、必要な環境保全措置をとって工事を進めることにしている。
 
 ◇全国協議会
 環境省からみて、環境影響評価の実施において生物多様性国家戦略を考慮した形跡はあるのか。
 
 ◆環境省
 生物多様性国家戦略は、考え方や理念とか、こういう考え方で進めるべきということが書いてある。たとえばいろいろなところで道路がつくられたり、都市開発がおこなわれたりというすべてについてチェックすることはできない。個別のものについては事業者において判断していただかなければならない。
 
 ◇全国協議会
 生物多様性国家戦略をきちんと守らなければならないという認識は防衛省も環境省も共有しているととらえていいか。
 
 ◆防衛省・環境省
 それでよろしい。

*今年度予算に816億円を計上

 ◇全国協議会
 裁判所の和解案を受け入れて今は埋め立て工事を中止しているとのことだが、最高裁の判決が今年中にでるかもしれないという状況のなかで私たちは危機感をもっている。
 土砂搬入関連の予算はどうなっているのか。
 
 ◆防衛省
 今年度(平成28年度)の予算に土砂購入にかかる経費を計上してある。埋め立て土砂の採取・運搬や埋め立て作業を今後3カ年にわたっておこなうのに必要な経費として約816億円を計上している。しかし、今は和解決定にもとづいて工事を中止しているので、土砂供給業者との契約はしていない。訴訟の判決が確定するまではなにもできない。
 
 ◇全国協議会
 びっくりするような説明がされた。土砂採取地もきまっていないのに、なぜ今年度から予算がついているのか。それはありえないだろう。見積もりをきちんととらなければ予算額は算定できないはずだ。どこの土砂を採取・運搬することを想定して算定したのか。
 
 ◇全国協議会
 奄美大島の大和村(やまとそん)では、本土の業者がやってきて土砂採取をはじめた。村役場前の港から、とりあえず那覇空港第2滑走路建設工事の現場に運んでいる。
 本土からきた業者は、新しい採石場をつくるために山の買い占めを進めている。辺野古埋め立て用の土砂を採取することが目的である。防衛省が予算を確保したので、防衛省の購入を見込んで乗りこんできている。
 しかし、辺野古の新基地建設については反対運動が強い。埋め立てがいつになるのかわからないのに、すでに土砂の採取・運搬費などが予算化されている。いったいどうなっているのか。
 業者は色めきたっている。奄美では、土砂採取に賛成と反対が部落ごとにわかれてたいへんなことになっている。奄美ではまた、土砂採取による赤土公害で港がひどい状態になっている。サンゴ礁が荒らされている。
 奄美大島は世界自然遺産の候補地である。国立公園の指定も予定されている。そういうところの山をどんどん削り、自然を破壊しようとしている。それを防衛省がそそのかしている。環境省はだまっている。
 土砂はいったいどこから辺野古に搬入する計画になっているのか。
 
 ◆防衛省
 埋め立て承認願書のなかで、岩ズリのストック量を調査している。それを念頭において3カ年で必要な土砂搬入量などの予算額を計上した。
 いずれにしても、土砂供給業者と契約したうえで採取場所を決めていくというプロセスを考えている。現時点では採取場所はきまっていない。
 
 ◇全国協議会
 採取場所が埋め立て承認願書添付図書の場所と変わった場合はどうなるのか。
 
 ◆防衛省
 埋め立て承認書のなかで、願書に記載されている埋め立て用土砂について変更があった場合は知事の承認を得ることになっている。

*外来種チェックは業者まかせ

 ◇全国協議会
 防衛局の説明でいちばん気になったのは、土砂供給業者に所要の調査を義務づけていることだ。この問題は、那覇空港第2滑走路建設の埋め立て工事における県外からの石材持ち込みですでに経験している。業者が出した届出書に添付された書類では、この山には特定外来生物はいないとなっていた。ところが沖縄県が今年3月に採取地の立ち入り調査をしたら、3カ所の山からすぐに特定外来生物がみつかった。業者まかせはまったくあてにならないということは、そのことからわかっているはずだ。
 那覇空港の実例については、防衛省も情報を入手しているはずだ。それなのに、いまになっても「供給業者に所要の調査を義務づけている」としきりに言われた。それを具体的にどう担保するのか。それをはっきり言わないと、通用しないのではないか。
 
 ◆防衛省
 業者の調査結果については、環境監視等委員会から指導・助言を得る。さらなる調査が必要と判断される場合には、供給業者に再度確認を求めるなど、沖縄防衛局において適切な対応をとることにしている。
 いずれにしても、沖縄県の「公有水面埋立事業における埋立用材に係る外来生物の侵入防止に関する条例」の第3条において、事業者は特定外来生物が付着または混入している埋め立て用材を県内に搬入してはならないという旨が規定されている。したがって、事業者の責任において適切に対応することとする。
 
 ◇全国協議会
 事業者の責任において適切に対応すると言われたが、具体的にどういうことでそれが担保されるのか。それを聞いている。
 今回わかっているのは、すべての対策が業者まかせになっていることだ。洗浄や目視がきちんとおこなわれるのか。そういうこともまったく業者まかせだ。
 そういう状況の中で、「所要の調査を業者に義務づけている」ということを口先だけで言われても、説得力はまったくない。
 
 ◆防衛省
 指摘されたことは理解する。しかし、いまは埋め立て工事が止まっている。埋め立て用土砂の供給地によって対策なども変わることがあるかと思う。この場でどうするかということを確定的に話すことはできない。
 
 ◇全国協議会
 外来生物有無のチェックを業者にまかせることについて、環境省はそれでいいと思っているのか。それで外来生物の持ち込みを防ぐことができるのか。
 
 ◆環境省
 ありとあらゆる外来生物の移動を環境省みずからがチェックするのは非常にむずかしい。
 いちばん合理的なのは、個々の事業者がチェックすることである。客観性の担保については、環境監視等委員会のなかでしっかりみていくことになる。
 
 ◇全国協議会
 外来種対策の総括的な方針をまずつくってもらいたい。そのうえではじめて予算をどうするか、というのが順番ではないか。
 外来種に関する所要の調査は業者に義務づけているということをしきりに話された。しかし那覇空港第2滑走路建設工事の事例からいうと、業者はチェックできないのではないか。そのことを私たちはなんどものべている。

*洗浄による外来種駆除は非現実的

 ◇全国協議会
 これは、奄美大島の岩ズリの実物だ。泥と砂のかたまりと岩がまじっている。これのなかになにかが見つかったとき、どういう対策ができるのか。そのことを本気で考えてほしい。
 那覇空港第2滑走路建設工事で用いている石材の場合は、外来種対策として洗浄している。しかし、岩ズリの場合は洗浄では対処できない。この岩ズリを洗ったら3分の1ぐらいなくなってしまうのではないか。岩ズリをいくら洗っても泥水ばかりがでてくる。そういうものにたいしてどうしたらいいのかなど、外来種対策の総括的なものをだしてほしい。そのように総合的に対処してはじめて、生物多様性国家戦略に抵触しないかどうかがわかるはずだ。
 そういう手続きがされないまま今年度予算に816億円が計上されていることを知り、びっくりした。それはないでしょう、という感じだ。
 
 ◆環境省
 都道府県のなかで外来種対策をどう進めていくかについては、地方自治の観点もあり、都道府県で判断すべきだと考えている。
 
 ◆防衛省
 まずは外来種対策を策定すべきというご意見だが、安定・確実な調達が可能な土砂供給業者と土砂購入の契約を締結したうえで土砂採取場所などを確定することにしている。
 外来種対策については、土砂をどこから採取してくるか。たとえばクモがいるのか、植物が増えているのか。そういう状況によって対策がきまってくると思うので、この場で総括的に申しあげることはできない。

*第三者機関の設置を

 ◇全国協議会
 それでなぜ予算化ができるのか。具体的な採取場所は、埋め立て承認願書の添付図書において一定程度指定されている。添付図書には、埋め立てに用いる土砂の採取場所の地図と採取量がかなり具体的に示されている。この地図を現場にもっていくと、業者の名前までわかる。だとすれば、どのような枠組みで外来種対策をするかということはいまからでもきめることができるはずだ。
 供給業者が調査したとしても、その結果をチェックする体制がなければ、そのまま素通りして持ち込まれるのではないか。私たちは那覇空港の例をあげてそのことをしきりに問題提起している。供給業者に調査を義務づけるやり方は破綻している。
 第三者的な専門家、あるいは環境省とか、いろいろな立場の、事業者(防衛省)でない専門家がそれをチェックする体制をとりいれる。そういう方式の枠組みをつくって提案してほしい。
 
 ◆防衛省
 沖縄防衛局が設置した部外の環境監視等委員会がそれに相当する。
 
 ◇全国協議会
 環境監視等委員会は、辺野古埋め立てを前提にし、環境影響を極力小さくするための事業を検討する委員会である。じっさいに何をやっているかというと、底生動物や陸上植物の移転計画などを真剣に検討している。信じられない。そんなことは現実的でないはずだ。
 環境監視等委員会の指導・助言を得るのはいいことだ。しかし、それは第三者機関ではない。辺野古埋め立てを前提にした委員会だからだ。辺野古の埋め立てを促進するために、環境への影響をちょっとでも小さくしたようにみせるためにはなにがありますかね、という知恵をだすための委員会である。第三者ではない。
 
 ◇全国協議会
 失敗したときはどうするのか。大浦湾にコンクリートブロックを投入して以来、大浦湾にはジュゴンがこなくなったという事例がある。それは失敗だと思う。そういうことがおこった場合はどうするのか。やはり、第三者的な立場の環境省か、あるいは外部の専門家がチェックしないとどうにもならないと思う。
 
 ◆防衛省
 将来失敗したときにどうするかということは、仮定の質問なので答えられない。
 
 ◇全国協議会
 外来種の防除対策として、那覇空港で用いたような洗浄の方法は有効なのか。洗浄するとしたら、どのくらい時間をかけて洗浄するのか。
 
 ◆防衛省
 ……。
 
 ◇全国協議会
 搬入する岩ズリを調査して特定外来生物がみつかった場合、どうやって駆除するのか。それを具体的に考えたことがあるのか。岩ズリの現物をみると、どうやったら駆除できるのか、と思う。
 
 ◆防衛省
 外来種の防除対策については今後検討する。

文・写真/中山
(JAWAN通信 No.117 2016年11月30日発行から転載)

>> トップページ >> REPORT目次ページ